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ベッドの下の海のレビュー・感想・評価

ベッドの下(2014年製作の映画)
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どうしてそうなのかわからない物事たちがそこにあることは、口に出さないでいるうちに忘れてしまうのかもしれない。明日もあなたはここに居るだろうか?明日もおなじ目でおなじようにわたしを見るだろうか?そんなすがりだって、あなたがわたしを必要としなくなった日かわたしがあなたを必要としなくなった日から少しずつ忘れてしまうことなのかもしれない。この1分間の映像を、1分間だけの映画だととらえることは、わたしにはとてもできず、たとえばこんなことを思う、あそことは違うアパートにあなたが住んでいてもきっとあなたを見つけていただろう、一個隣の檻の中であの猫が眠っていてもきっとあの猫を連れて帰っていただろう。わたしは自分が愛したものの顔や性格や匂いの中に「こわい」ものなど何ひとつなく、ただただ、あなたの外側にあるものが、あなたをさらっていくことだけが、こわいのです。何年か前に、ある匿名掲示板で『とん』とタイトルのついた短い話を読んだ。洗濯機の上が好きだった飼い猫が、飛びおりるときに聞こえていた「とん」という音が、猫が死んでしまってからもしばらくの間聴こえていた、というような話だった。わたしはなぜか観終わってすぐにこの話を思い出した。時が記憶をさらっていくのは自然なことです、だけれどわたしも含めた何もかもがあなたを傷つけてしまうことがこわい、はじめて猫に雪を見せた日のことや、夜眠る前にあなたが言っていたあの決まり文句を、必死に思い出していました。
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