マクガフィン

サバービコン 仮面を被った街のマクガフィンのレビュー・感想・評価

2.7
理想的に感じる白人しか住まない街に黒人家族が引っ越してきたことから巻き起こる奇妙な事件を描く物語。

均等に並ぶ色とりどりでカラフルな住宅街や職場でのシンメトリーな構図は白人だけの社会の調和を表し、壊れたメガネや子供用自転車などのアクセントを積み重ねて「ゲット・アウト」風な違和感を作りたいのは理解できた。それと同時にタランティーノ的なB級的な殺し合いを取り入れて、逆手にも問題提起するB級的ノワール ・コメディを目指したのだろうが、ブラックユーモアが殆ど感じられなく、テイスト・演出・演技の全てに纏まりが欠けて、コメディにもシリアスにも感じない残念な仕上がりに。
B級映画を独自に仕立てた作品のテイストを強引に取り入れて何をしたいのかが謎で、大仰でセンスのない音楽や音響も如何なものか。

排他的に扱われる黒人は移民問題を、理想郷的な田舎町は保守的な考えを、強権的な父親はトランプ大統領を、白人一家をトランプ政権のメタファーとして、『一見、平和のような保守的な考えは間違いだから、トランプ支持はやめましょう』と言うプロパガンダ映画は、作中の白人や街全体の欺瞞以上に映画自体が偽善に満ち溢れる結果に。

こんな風刺映画を量産するハリウッドに呆れるばかりで、映画のジャンルに「トランプ風刺」の項目を作ってほしいものだ。遊び心のないB級的映画を真面目に作ってどうする以前の問題に。