JAmmyWAng

ハクソー・リッジのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.5
この人、また凄いの撮ってる。

衛生兵を志願し、人を殺す事、武器を手に取る事を拒否するデズモンドが軍部や部隊から受ける様々な仕打ちと、それにより浮かび上がる信仰の強度、そして沖縄での凄惨極まる壮絶な戦争描写によって、フラストレーションの蓄積と解放がまさに暴力的なまでにドラスティックに為されていくんだけど、しかしそれは地獄の始まりであった、という沖縄での激戦。

まあとにかく戦争描写が凄すぎて、始まった途端に凍り付き、心情的には延々と続くように感じる阿鼻叫喚の光景に唖然としながらもひたすら魅入ってしまいました。

まさにこの世の地獄において、とにかく人命を救う事だけに己の全存在をかけて戦場を駆け回るデズモンドの姿は、信じ難い狂気に捕らわれているようでいて、本質的には揺るぎない神への信仰による輝きに満ちている。
その存在は地獄を生き抜くための光として皆に必要とされるようになるワケなんですが、分け隔ての無い圧倒的な信仰心の力強さと、それが人々の心の有り様を変えていく様には涙が止まりませんでした。

血と死体と硝煙にまみれた戦場の、狂っていくしかないような混沌の中でこそ、信仰は人を救うのだし、それを映画として表現するためには限り無く凄惨な戦争描写をする必要性があるワケですから、これはまさしくメル・ギブソン作品である、という感じの傑作でした。

映画館を出ると、北京はPM2.5で空気が白く霞んでおり、3M社製のフィルター付きマスクを装着しまして、沖縄激戦の一億分の一くらいの地獄に、自分もいるのかなあと思った次第です。
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