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ハクソー・リッジのkochabのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.8
多分多くの方が衛生兵の献身さ、そしてこの映画の戦争シーンのリアルさを褒めることと思います。私も確かに認めるところですが、だからあえては別の視点から。
まず、結論からするならば「明確な意思を持った"反戦映画"」であるということです。
まずこの映画、実は沖縄戦であったことを私は知りませんでした。観終わってから考えれば、本作予告編などは敢えて日本兵登場シーンを外していたのかな?と。私などはフランスなどの上陸作戦、かと思っていたくらいです。

そもそも米兵と戦う日本兵、というのは総じて精神レベルの低い下卑た存在として扱われ、だからこそそれに勝った米兵は優秀である、とある意味プロパカンダ的なところもあったと思います。

しかし、本作の日本兵は米兵とほぼ平等な扱い、多分制作陣からすれば米兵も日本兵も等しくリスペクトされているのかと思います。日本人的精神の部分もあれば米兵、と言うかその多くが信じるキリスト教にも実は不備があることを認めています。本作を読んで、それでも日本人であることが恥ずかしい、卑下するような思いを日本人は少ないと思います。

だからこそ思想、信条などのかけ違い、認められないといったところから戦争は起こるが、それによってもたらさせるのは敵も味方もなく、兵士に等しく「死」が訪れるのだ、と伝える部分もあると思います。そこがこの映画、リアルな戦争描写、そして負傷する姿が描かれる必要性があったのかと思います。
そしてその死が訪れる中にありながら死の淵にある負傷兵を敵味方なく自分の信条に基づき助ける姿が美しい、と思うのです。

米兵が倒れたすぐその横で日本兵も倒れるワンカットがあります。私はこのカットを生涯忘れることのないワンシーンだと思います。

やるな、メル・ギブソン監督。Σ(-᷅_-᷄๑)
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