ノラネコの呑んで観るシネマ

ハクソー・リッジのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.6
アンドリュー・ガーフィールドが、再び日本の地で信仰を問われる。
なんかこの人、前世で日本に縁があるのでは?
不殺の信仰から銃を持たず、沖縄のハクソー・リッジ(前田高地)の戦いで、自分の命をかえりみず負傷兵を救出しまくった衛生兵デズモンド・ドスを描く実話ベースの物語。
前半は少年時代から前代未聞の銃を持たない兵士が認められるまでの顛末、後半がハクソーリッジでの激戦という構成。
基本的にドスが過酷な現実を前に、信仰に基づく信念を貫き通せるかという話。
前半では軍内部の偏見が、後半では戦争の現実が立ちはだかる。
ドスは米兵だけでなく、日本兵まで救出しようとしていたというのだから、その信念の強さは驚くべきもの。
戦闘が始まると、敵味方両方で「衛生兵!」って叫び声(日本軍のはもちろん日本語)が繰り返されるのは印象的。
硝煙の向こうにも、もう一人のドスがいるのだ。
私の祖父は戦時中衛生兵で、戦場では一番しんどい役と話していたけど、この映画観ると納得だわ。
中盤の神との対話や最後のイメージなど、ドスをキリストと重ね合わせてるのは明らかで、ギブソン監督的には2000年後の「パッションvol.2」か。
しかし、意外とロジカルにきっちり作られているというか、過去のギブソン監督作品の様に、バランスを崩してまで一つのイメージだけを追求する様なねちっこさは薄れた。
戦闘描写は凄惨だが、「プライベート・ライアン」などと比べても意外性は感じないんだな。
これは基本的に、主人公の内面に寄り添った極めて主観的な映画で、戦争はその背景のシチュエーションに過ぎない。
沖縄戦をリアルに俯瞰する視点は、ドラマの「ザ・パシフィック」の方が持っていた。
戦争をモチーフにした信念の物語として観ると、満足度は高い。
ブログ記事:
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