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ハクソー・リッジのdaisakのネタバレレビュー・内容・結末

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

同じ革のベルトも、使い方次第で鞭にもなれば、駆血帯にもなる。
メルギブソン監督は当たり外れの振り幅が激しいけど、ブレイブハートやパッションが好きなので前知識なしで鑑賞。
全然知らなかったけど、ハクソーリッジ=前田高地(沖縄)戦での熾烈を極めた日米戦を舞台に、衛生兵として頑なに武器を持つことを拒否したプロテスタント信者(菜食主義)の主人公を米目線から描いた実話でした。
主人公が非暴力(アヒンサー)を貫き通す決意をした幼少期の出来事、アル中の父親との確執、恋人との誓いを胸に、パールハーバーに衝撃を受け、良心的兵役拒否者として奉仕の精神で戦列に加わるも、武器を持たない信条から師団内で目の敵にされ、遂にはリンチを受けた上に軍法会議にかけられ犯罪者扱い。
恋人との結婚式の日も独房で過ごし、それでも武器を持たなかった彼が戦場で果たした行動とは…?
遠藤周作の「沈黙」を彷彿とさせる描写もあり、後半は狡猾&執拗で尚且つ死を恐れない日本兵の活躍で五臓六腑をブチまける地獄絵図が延々続き、彼らは一体何のために何と戦っているのだろう?前線に立たされた兵士はただ、自分のみが生き残る為には手段を選ばない。そこには勿論正義もクソもない、そんな中で自己犠牲を省みず、奉仕の精神から敵である日本兵を含む75人を救出した事実は確かに偉大だ。しかし、戦争から美談なんて生まれるわけがない。そんなものは戦勝国のエゴである。まあそれを美談に仕立て上げるメルギブのパワープレイは流石と言うべきか。
6.23は沖縄戦慰霊の日です。
個人的に、去年訪れた糸満市の暗いガマの中で家族で集団強制自決を強いられた人たちの痕跡が頭をよぎり続けた。そんな歴史の裏に隠された真実に目を向けると、戦争にヒーローなんて存在しない。
日本目線から沖縄戦を描いた岡本喜八監督の「激動の昭和史 沖縄決戦」もご参照あれ。
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