矢吹健を称える会

ハクソー・リッジの矢吹健を称える会のネタバレレビュー・内容・結末

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

 ぶっとい筆致にアメリカ映画の歴史を感じる。久しぶりに「ヒーロー」というものをちゃんと描いた映画を見たという感じだ。

 まあ同時に狂人でもある人だが。前半のアンドリュー・ガーフィールドはたしかに好青年的な感じもあるが同時にサイコっぽさがあり、田島貴男っぽい笑顔がだんだん怖くなってくる。そして入隊以降のあんまりな強情さ、しぶとさに対する仲間の「なんなのこいつ……」という視線は、後半の主人公の偉業に対しても同じように注がれる。ただしそこには訓練時とは違うニュアンスが込められていて、そういうのにどうも泣かされてしまった次第でございます。

 宇多丸師匠だったか、「映画監督はみんな自分なりの『プライベート・ライアン』を作りたがる」と言っていたが、前半ではそこに『フルメタル・ジャケット』を足し、さらに見えない敵ということで『父親たちの星条旗』のようなところもある。そこに加えて内臓から蛆虫から容赦ないゴア描写があり、てりゅうだんがらみの面白アクションなどもあり、おなかいっぱいである。あと個人的に好きなのは「アンドリュー・ガーフィルドに引きずられながら連射」というシーンで、あれは楽しそうである。
 また視界を覆い隠すものとしての爆炎と煙の量は本作の個性で、クライマックスが「崖の上」という、味方部隊の視点が届かない場所に設定されているのも意味があるのだろう。誰も見ていない場所でアンドリュー・ガーフィールドが文字通り「献身」する様を見ていると、『プロジェクトX』観賞時のような気持ちになりました。
 しかしやっぱりメル・ギブソン、どうかしてるなと思ったのは、謎のハラキリシーンとか入れる点。必要か? 兄貴も途中から完全に退場するし。あと二回目の攻撃シーンでアンドリュー・ガーフィールドがよくわからん活躍をするあたりも、作為を感じてしまう。まあそういう歪なところもあるのだが、一番きてるなと思ったのはラスト・ショット。それまで高い崖の上からみな身体を垂直にして降りなければならなかったところを、仰向けになって降ろされる主人公。ぐるっとカメラが廻りこんで、下から撮ったりする。ここまで別格化するのもどうかと思うんだが。

 あとヒロインがキャシー・オドネルに似ててめっちゃ好き。