ずけし67

ハクソー・リッジのずけし67のレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
2.8
世間では評価されている映画なのに、自分にはちょっと合わない映画ってあると思うんですけど、今回はその映画に当たってしまったっぽい(汗

アカデミー賞2部門を受賞し、総じて評価の高い本作。
なんだけど... 観た率直な感想としては、う~ん、ちょっとなあ、って、引いた目線で観てしまいました。

なので、この映画が好きな人は読まずにスルーしてもらえればと思います。
それなりに酷評してます。ゴメンナサイ(汗


戦争映画はこれまで多少なり観てきたけど、まず思ったのは、この映画をメル・ギブソンではなくクリント・イーストウッドやリドリー・スコットが撮っていたら、どんな作品に仕上がっていただろうか。
そんな考えが頭をよぎったっぽい。

「汝、殺すなかれ」、だから敵であっても人は殺さないという信念を貫き、過酷な戦場で銃も持たずに衛生兵としてひたすらに命を救い続ける。
もう1人、もう1人、と自らもボロボロになりながら、傷ついた兵士たちを救い続けるその姿は感動的です。

なるほど、伝説・英雄として語り継がれるのも分かります。

そうなんです!
この映画はまさに戦争ヒーロー伝説、更には宗教的偉人伝と言って良いくらい、主人公が神がかり的にスーパーでアメージング、そして、訴えるメッセージや作中に散りばめられたエピソードも、ことごとく宗教色に染まっています。

思うに、僕が好きな(共感できる)ヒーローは、実は普通の人と大差なく、弱さや臆病な部分もあって、だからいろいろ葛藤したり挫折もする、でもそれを乗り越えたり克服したりするから共感したり胸を打たれたりするのだと思われ。

ところが本作は、主人公をはじめ、登場する兵士たちも臆病者など1人もおらず皆勇敢、主人公に至っては自らの信念を貫く鋼のメンタルに加え、隊でも一番のやせっぽちでありながら驚異的な身体能力で戦場を駆け回ります。

実際、多くの米帰還兵がPTSDに陥ったと言われる沖縄・前田高地(ハクソーリッジ)の戦いは相当な激戦地だったようですが、プライベートライアンで描かれたノルマンディ上陸作戦ばりに過酷で凄惨な戦場描写は確かに圧巻だったものの、あの銃弾飛び交う超接近戦の、しかも最前線で、更には敵陣に乗り込んでも銃も持たない丸腰でスーパーアメージングに切り抜けるとは...
神のご加護?

弾が当たってもあのヘルメットに助けられる(他の兵士はヘルメット貫通して死んじゃうけど)
神のご加護?

飛んでくる手榴弾をオーバーヘッドキックで蹴り返す...ペレか?
まあ、ペレがやったのならまさに " 神 "なので(サッカーのですが)OKなのでしょうが...

とどめはラスト付近の「祈り」や「聖書」のエピソード。
どんだけ~、もう苦笑いするしかありません。

この神がかり的な戦争英雄伝説、これは神を信ずる強い信仰心、神の思し召しなのだよ、と信仰心旺盛なメルギブさんは言いたいんだろか。

う~~、そもそも信仰以前に、そう、宗教は一旦置いといて、人を殺してはいけないよ、人命は尊いのだよ、そういった考えは人として普遍的な倫理観であり道徳心だと思うし、信念を貫く姿勢も同様のものと思います。

多くの人が本作に感動し評価しているのも、その本質の部分に対してだと思われ。

その人間本来の倫理観、道徳心に訴えるようなテーマを持ってきておいて、それを劇場型の戦争ヒーロー伝説、且つ宗教偉人伝説的にくどくどやってしまったことに、正直僕はイラっとしたし、引いたっぽい。

そもそも宗教にも、宗教モノにも、特別なこだわりやアレルギーを持ってるわけじゃないので、こんなことなら、いっそのこと完全な宗教偉人ドキュメンタリーにするか、逆に宗教色を一切取っ払った戦争ヒーローエンタメの方向へ振り切ってもらったほうがまだ良かったと思われ。

前半の軍や仲間から迫害を受けるパートなどは良かったし、戦意高揚ものでもないし(むしろ反戦)、敵国卑下も特にないし、何より映画作品としての出来は良かっただけに(純粋に映画監督としてメル・ギブソンは良い監督だと思います)悔やまれる作品でした。

「アメリカンスナイパー」や「硫黄島からの手紙」、「ブラックホークダウン」などは胸に熱く響いたんだけどなあ...
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