幕のリア

ハクソー・リッジの幕のリアのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
今日はインディペンデンスDAYだったのか。

沖縄決戦。
ほぼ土人扱いの日本兵が圧倒的な火力の差に殺戮され尽くされる。
日本人としては非常にナーバスにならざるを得ない内容ながら、旧満州でのソビエトの侵攻や東京大空襲や原爆投下に比べ、「本土決戦」としての見るに耐えない思いがどれほどあるのか、歴史的認識をどれほど持てているのか、自分自身も含めて、懐疑的にならざるを得ない。

アンドリュー・ガーフィールド演ずるデズモンド・ドスの確固たる信仰や信念と実話に基づく物語に引き込まれては、片側からしか描かれない美化されたドラマや戦闘なのだと引き戻される事を繰り返した。

ただ、メル・ギブソンの徹底した生身の肉体の酷使や破壊という作家性は今作でも剥き出しで、上映中片時も気の抜けない熱量に圧倒される。

前半に彼女が持っていた「RARE BIRDS」の図鑑。
似た者同士。
森で羽を拾う主人公。
共感。
多くの人を救い、担架で宙を舞う。
解放。


残業規制やコンプライアンス問題。
一見労働する者の権利を守りますとセッティングされてる昨今の社会的風潮。
コミュニケーションツールの活用の大義名分のもと、CCメールやグループLINEで一方的に情報を投げつけてくる凶暴な人種がいる。
丸投げだろうが、一定量の正解さえ出せれば内容の是非は問われない。
商品を作るにあたり、知識や経験も借り物競争かのよう。
自動販売機の押しボタンの種類が多ければ多いほど歓迎される空虚なオペレーション。

道徳的な言葉で映画を語るのは野暮だけれども、願わくばひとの記憶に残るような行動を取ることが出来れば幸いだな、と思う。

「沈黙」では全く受け入れ難かったアンドリュー君の表現は今作ではステージが一つも二つも上でした。
そして、何と言ってもヴィンス・ヴォーンが素晴らしかった!

兵士と死体と銃弾でカオス状態の戦場で、布陣の様子などが明確でストレスを感じない。
今年見た凡作「フリー・ファイヤー」とは雲泥の差で、監督の技量の高さに改めて感嘆。

2017劇場版鑑賞67本目
幕のリア

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