Yoshmon

ハクソー・リッジのYoshmonのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
『汝、殺すことなかれ。』

第二次世界大戦下、多くの友人知人が祖国のために戦場に赴く中、自分も役に立ちたいと兵役に志願して当時激戦地であった沖縄・前田高知、通称”ハクソー・リッジ”へ赴くデズモンド・ドス。

ここまでは愛国心に富む国民が多いアメリカではよく聞く話。
この作品で取り上げられるデズモンド・ドスという人物が他と異なるのは良心的兵役拒否者として銃刀の所持並びに使用を頑なに拒否して衛生兵として仲間を救うことで祖国への貢献を決めたということ。

その結果、良心的兵役拒否者としてアメリカで初めて名誉勲章を授与された人物となる。

作品の構成としては、
幼少期の出来事から家庭内の問題、パートナーとの出会い、陸軍へ志願してから実際に戦場へ赴くことを陸軍に認められるまでの要所要所を描いて彼が武器を決して手にしない意志を持つに至る経緯を明らかにしている。

でも個人的には軍関係者も困惑していたように、何故武器の使用を拒否していながら、そこまでして戦地へ赴かんと思い至ったのか、その点が判然と伝わってこなかった。

戦争とは今も昔も武力で以って、相手方を抑圧する行為。その点は僕も軍関係者と同意見。

武器の使用ができないのであれば、そもそも戦場へ行かなくてもできる貢献は他にもあるはず。

デズモンド・ドスは自らが信仰しているキリスト教の教えと、過去の自身の過ちと露わになった自身の内に眠る怒りに恐れ武器の使用を拒否する意志を固めたことが作中から伝わったけれど、戦争を知らない、そしてアメリカ国民でもない僕には彼の思考をなぞることが出来るほどの境地にはいない。

言ってしまえば、直接敵を攻撃することはせずとも敵を殺す仲間のサポートはしていたことになるし。。

結果論で言えば、彼の処遇に関して軍法会議が執り行われるほどの事態になりながらも、戦地へ赴きアメリカ合衆国に対して多大な貢献を認められ、尚且つ彼の確固とした信念は相手も選ばず2名の負傷した日本兵にも手を差し伸べた事実も忘れちゃいけない。

その点は作中ではさらっと触れていただけなのは残念。
ハクソー・リッジからロープを使って救出された日本兵に対する他のアメリカ兵の感じることは想像に難くないけど。。

当初は戦地へ行くまでに軍の上層部や同僚の圧力に苦しみながらも、彼が自身の信念を曲げなかったからこそ生み出された事実は、只々敬服。

なんでだろ。この作品はオーストラリアの俳優陣が多い。
アバターの"I see you."の白々しい演技に冷めてしまったサム・ワーシントンもこの作品にはハマってて良かった。
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