ナツミ

ハクソー・リッジのナツミのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
曇った視界にうかぶ人影、足元に転がる手榴弾、想像を超える人口密度の高さ・敵との近さ、恐ろしすぎる。前半のステキ青年の日常、敬虔な彼の信念を描き、犯罪者になることもなく良かったなぁと思った直後の、1945年沖縄.......ズーン.......まず引き返してくる隊とすれ違うシーンの絶望が凄い。未来の自分たち。怒涛の戦闘が始まってからの凄まじい描写の数々、爆発音で耳がおかしくなりながら次々に展開する戦争に圧倒される。(ここまでドスの半生を丁寧に描かれていてもとにかく日本兵が死ぬと悲しい。壕の中で首くくってたり、切腹したりするシーンってわりと唐突にはさまれてきた気がするけど外国の人とか観たらなんでってならんのかな?)
これって戦争映画というより、ドスの信仰の物語だと思った。神の声をきくとかはインチキ、自分は信仰を持っているだけ。そう語るドスが地獄の崖のふちでまさに、神の声をきくシーン!神は縋り助けられる対象物ではなく、自分の内側にある信念を支えてくれるものであり、人間をとおして発現する現象なんだ、というこれは高校の聖書の最後の授業で習った話なのですが、そんなこと思い出してぶちのめされる思いでした。
戦闘がスローモーションになると、さっきまであんなに恐ろしい地獄だったのになぜかすごく美しくて神聖にみえた。ラストとか宗教画みたい。ドスがあんなに必死に救った命も、再び侵攻が始まれば一瞬で消えていく。いったい何なのかこの世界は...こんな地獄だけど、単なる綺麗事の押し付けではなかったから、真摯で信じられる作品だった。
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