終戦記念として上映している「この世界の片隅に」の隣で観るという何だか複雑な気分で観賞。
それのおかげか、イデオロギーについてフラットに観れた気がする。沖縄戦での兵士たちの描かれ方は、主人公の信心を試す障壁として描かれているため内面描写はない。だけど切腹場面にメル・ギブソンらしい言葉にならない信念を感じた。
主人公は最初、土曜日の休みを要求するニヤけたボンクラにしか見えず、共感しずらかったきらいがある。
しかし神の声を求めた直後に、聞こえてくる助けを求める声が聞こえてからが、この作品のただならぬパワーを爆発させて独自の輝きを放ち始める展開となる。
戦争映画というよりも、極限状態の中で矛盾した信念を何処まで貫けられるか試されているような内容。
そう観ると「パッション」と同じで、主人公が肩に仲間を担いで走る姿は十字架を背負うキリストに重なる。
とにかく、どうやって撮ったのか分からなくなるくらい激しくて厳しい戦闘シーンが続き、悲惨なはずなのに感覚が麻痺してくるという状態となる。
これは信心と狂気の狭間で、自分を貫く主人公と監督の信念の物語。実は日本人側にもそういった描写があることが、この作品の一貫性を示している。