回想シーンでご飯3杯いける

ハクソー・リッジの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.8
熱心なキリスト教徒である事から、人を殺める事無く平和に貢献したいと考え、衛生兵として沖縄戦に参加したアメリカ軍兵士、デズモンド・ドスの活躍を描いた実話物。

監督は、自ら教会を建てるほどの熱烈なキリスト教徒であるメル・ギブソン。その宗教観ともリンクしていると思われる自己犠牲の精神が、これまでの作品同様、残虐描写として具現化され、後半の戦闘シーンでは、あの「プライベート・ライアン」に匹敵する地獄絵図が繰り広げられる。

その地獄へ、銃を持たずに参戦する主人公の純粋で勇気溢れる姿に、平和に対する強い信念を感じる。

しかし、本作に於ける「実話」は、恐らくデズモンドの行動のみである。他のアメリカ兵は、日本兵を次々に殺しているのに、そこに対する詳細な描写は無し。実際の沖縄戦では数千人の民間人が犠牲になっているが、その描写も一切無い。ヒーローにスポットを当てた構成は、いかにもアメリカ映画と言える。

ただ、これは戦争映画である以上、いたし方ない部分もあると思う。日本側の犠牲者を描くか否かは、製作側も当然議論しただろうし、その結果として、この表現手法を選んだのだろう。本作は史実としての実話を知る作品では無いが、デズモンドの「銃を持たない勇気」という実話を描いた素晴らしい作品なのだと思う。

何よりも、戦闘の舞台となった沖縄県浦添市が、この「ハクソーリッジ」に対する賞賛を表明しており、ホームページ等で詳細な考察や、平和へのメッセージを公開している事が、作品としての成功を物語っている。

■浦添市役所 - 『ハクソー・リッジ』~作品の舞台をご案内します~
http://www.city.urasoe.lg.jp/docs/2017052900033/