アキラナウェイ

ハクソー・リッジのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.5
「不殺(殺さず)の誓い…逆刃刀だ…」(声:佐藤健)

るろうに剣心が脳裏によぎった。

本作のデズモンド・ドスも、国は違えど思いは同じ。

神の戒めである十戒。

その第六戒「殺してはならない」という戒めを胸に、太平洋戦争下の沖縄戦で多くの負傷者を救出した衛生兵デズモンド・ドスの実体験がベースとなった映画。

凄惨な戦争描写が話題となり、確かにハクソー・リッジ(「前田高地」と呼ばれた日本軍陣地)での戦いが大きな見所ではあるが、志願し銃を持たずして戦地に赴いたデズモンドの信仰そのものを描いた映画。実にメル・ギブソン監督らしい。

アンドリュー・ガーフィールド演じるデズモンドは、軍の上官による命令だとしても頑として銃を手にしなかった。

銃は持たない。人は殺さないと神に誓ったから。

異質な彼を周囲は当然嘲り、臆病者だと非難する。
軍法会議にかけられるまで追い詰められても、彼はその信仰を曲げなかった。

そして、戦地での救出劇。

秒単位で撃たれて倒れていく仲間達。
撃たれた者、脚が吹き飛んだ者、デズモンドは味方の元に駆け寄っては応急処置を施していく。

「もう一人」
「もう一人」
「あともう一人助けさせて下さい」
彼の必死の思いと行動に言葉が出ない。どこまでも貪欲に味方を救うという姿が強烈なインパクトを残す。

ただ戦争描写で終始するのではなく、前半は彼の生い立ちを丁寧に描き、何故彼が殺さないと誓ったのかを描く。
中盤では入隊後の試練を。そして後半のハクソー・リッジでの戦い。構成が見事で、どのパートも互いに引き立たせる為に必要なパートとして描かれる。前半が無ければ中盤が活きてこないし、中盤がなければ後半の感動は生まれない。

アンドリュー・ガーフィールドは前作「沈黙」に続き、確かな演技力を見せてくれる。脇を固める俳優陣も素晴らしい。
サム・ワーシントンは本作でようやくカッコいいと思えた。(アバターなんかより断然いい!)

*このレビューでは、敢えて彼が救出した人数は伏せました。劇中「何人助けるんだよ!」と最も気になったのがその人数だったので。エンドロールで判明します。

*このレビューでは、敢えて彼の強い思いを「信念」ではなく「信仰」としました。信念とは人の思いだけれど、彼のそれは奇跡を生み出す程、人の思いを超越したものだから。

大事なものを守る為、敢えて武器を取らない。
そんな人が居てもいい世の中であるべきだと思う。