ひろ

ハクソー・リッジのひろのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.0
気になっていたけど劇場で見ることができず、先日DVDにてようやく鑑賞。



 オープニングいきなり死体だらけのシーンが飛び込んできて「これは気合の入った戦争映画だな…」と見始め、そこからドスの幼少期、兄弟喧嘩のシーンへと飛ばされ、弟を危うく殺してしかけたエピソードや事故現場に居合わせたエピソード、その後も回想がちょこちょこ入ったりするのだがそれらによる「戦場における死」と「日常における死」の対比が鮮明だなと感じた。
 最初に「気合入った戦争映画」なんて思っていた自分もそうだが、戦争って人の死に対する感覚を麻痺させてるというのをまざまざと見せつけられた気がする。そしてドスの死への向き合い方が戦場という場所においてどれだけ尊く、そして難しいものなのかがハッキリと浮かび上がってくる構成だったと思う。
 そして主演のアンドリュー・ガーフィールドの演技がまた良くて、ドスとして「殺さない、死なせない」という信念を突き通す姿はある種の狂気すら感じるような鬼気迫る名演だった。



 そしてこの作品を見終わって最初に思ったのがこれはあくまでも衛生兵デズモンド・T・ドス個人の物語を描いた作品なんだろうなということ。
結構「宗教観を押し付けられる」とか「キリスト教的作品」とかいう感想を目にしたけど、あくまでも銃を持たない、暴力を使わないというのはドスの信念であって、彼個人を主人公にしているんだからそんなに気にするようなものではないんじゃないかと思った。
 ただ敬虔なクリスチャンがこのような行いをしたというだけで「こうあるべき」と押し付けられている様な印象は少なくとも自分は持たなかった。


(がっつりネタバレ注意)
 逆に気になったのは映画のラストに向かう流れだった。ハクソーで味方が撤退した後に一人で多くの仲間を救い、ようやく自身も崖から降りたと思ったら再攻勢をかける味方に「ついてきてほしい」と頼まれ再び崖の上へ、そこで味方をかばって手榴弾を防いで負傷、後方へ…といった感じで終わる・・・
 まあなんというか・・・再攻勢のシーン要るか?あれだけ多くの味方、時には敵兵すら救い、最後には味方が「お前が来てくれなきゃ誰も上らない」とまで言わしめ彼の信念を皆が認めた!と思った後に待ってるのはアメリカ兵が突撃して日本兵をなぎ倒して行ったり、日本の指揮官が切腹したりという凄惨な殺し合いのシーン…
 もちろんドスはその中でも懸命に命を救おうとするし、自分を犠牲にしてまで手榴弾から仲間を守るわけなんだけど、どうにも雄たけびを上げながら敵を殺す人々をわざわざスローモーションで見せる必要性があるのかと感じる。彼の美しい信念を見せたいのなら、m土曜の祈りを捧げ再び命を救うために戦場へ向かう彼の背中で終わったほうがスッキリしたんじゃないかなーと素人考えに思ってしまうのだ・・・



しかし、ラストのシーンを除けばとても見応えがあったし、たぶん自分が考えすぎなんだろうなとも思うので総合評価は星3つ。
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