みほみほ

ハクソー・リッジのみほみほのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.3
今まで観た戦争映画の中で、最も印象に残り苦しかった。残酷だから目に焼きついたのではなくて、心に訴えかけてくるものが強かった。思いの外、心情が手に取るように描かれていて、戦争とは無情で不条理な事だと見せつけるのは勿論、それぞれの立場も分かりやすかった。

そもそもハクソー・リッジが何かも知らずに観たわけだが、沖縄だったとは…

沖縄の崖。命懸けの戦闘。日米の殺し合い。信念を持った一人の男の救出劇。
相手はエイリアンではなく、人間。そして日本人。複雑な気持ちと葛藤しながらも、米兵側の恐れを知り、日本の作品で描かれる米兵との差にとても驚いた。どちらを主役にするかによって植え付けられるイメージの恐ろしさを知った。

主人公が戦争へ行く動機に対しては、冒頭の家族風景を見ていても全く入り込めなかった。あんなに可愛い奥さんに出逢えたのに、何故戦地へ…と思ったが、観ていくうちに、なるほどな…と自然に納得していた。もっと描いて欲しかった部分がここであるのは事実だが、圧巻の戦闘シーンを観ていたらそんな事は忘れていた。

皆は殺すが僕は助ける
この言葉に私自身矛盾を感じたので、少し遠い目をしてる自分も居たのだが、戦闘シーンに入ってからは度肝を抜かれ 涙を流し続けた。こんなに止まらない涙あるかってくらい泣いてた。辛かった。

人が本気で殺しあうっていうのはこういう事なんだとまざまざと見せつけられた。それを目の前にしてもはや言葉もない。
あの沖縄戦。逆の立場から違った角度で見せられた時、絶句した。

こんなところで リメンバーパールハーバーの教訓が生きてくるとは思いもしなかった。憎むけれど、お互いに傷つけあった事を忘れてはいけないし、そう仕向けさせた国のお偉い方の罪は深い。

米兵の持つ火炎放射器や焼夷弾は沢山の人を苦しませ焼き殺してきた最低最悪の武器だし、なんて鬼畜な武器を持つのだろうと昔から恐れと怒りに震えていたのだが、逆の立場でこういう風に見せられると、死ぬ気で戦う日本兵の持つ刃のついた銃も恐ろしかったんだと気付かされた。

戦場でモルヒネを打ってもらえるってどれだけ幸せなのだろう…。

どちらが勝つ負けるとかそういう事ではなく、1人の信念が沢山の命を救うので、後味の悪さも少ないし、戦争映画としては観やすい方だと私は思う。

沢山の人間が悶え苦しみながら死んでいったこんな歴史は、もういい加減にやめて欲しい。何も痛い思いをしてない世代が言える事じゃないけれど、体験を祖母から聞いたり映像や本を通じて見て学んできたけど、戦争が無い平和な今の世であっても人間同士で揉めあって 憎しみあって、集団になれば誰かを苛めたり、人と競い合ったり、今日も何処かで誰かが死んだり泣いているのだから、せめて 人が人を殺す事が正義になる戦争だけは 世界中で無くしてほしい。

罪のない女性や子供ってよく言うが、兵士になる男性にも罪なんか元々ないんだから、これからも平和な世の中で生きていきたいと強く思うそんな映画。

少し美談に見えた節もあるけど、素晴らしい行動であり、ラストはこんな事されたら拍手したくなっちゃうよ!と思いました。素晴らしかったです。

日本人にモルヒネを打ってあげるシーンは心がツーンとしました。この青年が助けた命の重さが染みる映画でした。
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