Nabkov

ハクソー・リッジのNabkovのネタバレレビュー・内容・結末

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

やっと観た。ずっと観たくなかった。理解出来るはずがないと、思っていた。私はクリスチャンでもないし、アメリカ合衆国の国民でもない。

ずっと鑑賞中に疑念が拭えなかった。不殺の誓いを立てるのは結構だが、それはイデオロギーに根付くもので、何者にも変えられない、信念ではない。彼は祈る、人を助けるたびに「もう1人救わせてください」と。

劇中で日本人も助けた描写がある。塹壕で、はたまた下半身のないひとを。本当だろうか、史実でも彼は、彼を「モデル」とした人物は、日本人を助けたのだろうか。崖の下のアメリカ陸軍に所属した人々はそれに敬意を表したのだろうか。

正直、この作品が好きになれない。友人たちはこの作品を賞賛している。もちろん自分だってそうなれればと思って、鑑賞した。でもやはり無理だった。日本人として、彼らにとっての「異教徒」として。(いや、正確には不可知な状態なので、異とまでは言い過ぎか。)

この作品を好きな人たちは多い。現在、この日本人しか使うことのないSNSにおいて、星4つをアベレージで叩き出している。ならば彼らの意見も聞いてみたい。その上で再鑑賞して、今一度この作品と向き合ってみようと思う。

特に気に入らないところ。冒頭の弟との喧嘩のシーンの脈絡のなさと、そこからレンガで殴るシーン。しかも彼の根元には影響を与えているのかもしれないけど、大人の彼がそれを礎としていないこと。

彼がヴィンス・ヴォーン演じる上官軍曹を引き摺るシーン。ある意味でこの映画のハイライトとなり得るシーン。彼は殺さずの誓いを立てているが、それに加担することを辞さない心構え。もちろん戦争だからそれで良いとは思うが、特別日本人だからと言う訳ではなく、彼の国の人間ではない立ち位置、彼の宗教とは違う立ち位置からすると、なんの説得力も感じない。

彼の考えを否定する気はない。もちろん日本人が可哀想とか、日本人にしたことを思い出せ、などと軽々しく言うつもりはない、日本人もあの大戦では、その前から、おかしかったのは事実だ。だが彼の主義をことさら美しく描こうとするが、そのイデオロギーに追随出来ない人間からは、エゴを丸出しの滑稽な姿しか映らない様に感じた。同じく沖縄戦を描いたザ・パシフィックを観た後だと、とてもではないが、納得することはできない。

加えて一点。前半のアンドリュー・ガーフィールドの芝居。やたらとヘラヘラしていることが気になった。特に上陸後はそうでないところを見ると、あえての演出の様だから尚更。自分を異端と認識した上で、受け入れられようと必死になっていると言う芝居なのであれば、ラストのご本人登場はなんの意味があるのだろうか?

結局のところ、不殺を標榜としながら、戦争という殺戮の場に、卑怯な相手だろうとなんだろうと、加担した時点で。戦場においては共謀者であり、彼の志は何の意味もなさないと思う。
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