御徒町マチ子

ハクソー・リッジの御徒町マチ子のレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
5.0
あまりに過酷な戦場で、悲惨な死が当たり前のように隣にあって、さっきまで言葉を交わしていた仲間が次の瞬間には動かなくなっている。そんな極限状態にあって、それでも神様の声なき声をたどって、もうひとり、あともうひとりだけ助けてさせてくださいと、主に祈ったデズモンドの揺れ動く瞳が忘れられない。「戦争は憎しみ合う者同士の戦いではない、愛し合う者たちの別離だ」と、これは「愛と哀しみのボレロ」の印象的なモノローグだが、個人が個人でいられなくなり、尊厳も命の重さも剥奪される戦争のさなかで、それでも、誰かの息子であり、父であり、夫である誰かをひとりひとり叱咤し、安心させ、命を救う......。ミッション系の学校に通っていたこともあり、私自身聖書の言葉には幾度となく助けられてきたが、彼は主の言葉に耳を澄ませ、救済を得るだけでなく、そこから湧き上がった信念と信仰心から、多くの人の命を助けた。信仰とは何をもたらすのか、私たちは主から受け取った御言葉と力をどう使うべきなのか。狂気にも似た荒々しさとずっしりとした重さでもってその問いに答えてくれた本作は、自分にとって生涯忘れられないものになるだろう。