ハクソー・リッジの作品情報・感想・評価 - 449ページ目

ハクソー・リッジ2016年製作の映画)

Hacksaw Ridge

上映日:2017年06月24日

製作国:

上映時間:139分

4.1

あらすじ

人を殺めてはいけない。そう強く心に決めていたデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、軍隊でもその意志を貫こうとしていた。上官(サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン)や同僚(ルーク・ブレイシー)に疎まれながらも、妻(テリーサ・パーマー)や父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の助けを借りて、銃を持たずに戦場に行くことを許可される。そして、デズモンドは難攻不落の最終戦地“ハクソー・リッジ”での戦闘に…

人を殺めてはいけない。そう強く心に決めていたデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、軍隊でもその意志を貫こうとしていた。上官(サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン)や同僚(ルーク・ブレイシー)に疎まれながらも、妻(テリーサ・パーマー)や父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の助けを借りて、銃を持たずに戦場に行くことを許可される。そして、デズモンドは難攻不落の最終戦地“ハクソー・リッジ”での戦闘に参加することになった。アメリカ軍が幾度となくハクソーの崖を登り制圧するも、敵のすさまじい攻撃に遭い、その度に撤退を余儀なくされる。敵の攻撃が続く中で、負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たった一人で戦場へ留まるというあり得ない決意をするが…

「ハクソー・リッジ」に投稿された感想・評価

2017.04.12 Blu-ray
2017.04.19 Blu-ray 英語字幕
MoviesCafe

MoviesCafeの感想・評価

4.1
〜人間が創り出す命の戦場〜

「日本人の受け止め方」に関するメルギブソンの発言と「残酷な戦場描写?」「日本人の描き方」の真相を追求する。

『汝、殺すなかれ』とは、ユダヤ教・キリスト教の戒律であると同時に、人類の普遍的な倫理観である。
ところが、人類は平和を実現する為に数多くの戦争で戦をし、命を奪い合った…
ただ、この矛盾を受け入れることを良しとしないまま、戦地に赴いた兵士がいたのです。
彼の名はデズモンドドス。
この実在した衛生兵の闘いを描いた映画が『ハクソーリッジ』です。

一部で話題になっている沖縄戦での「残酷な戦場描写」や「敵である日本人がどのように描かれているのか(反日的な映画ではないのか)」といった点が気になる映画ファンも多いと思います。
今回は主にそうした部分に焦点を当てると同時に、『ハクソーリッジ』の今年6月24日の日本公開を可能にしてくれた配給会社についても触れてみたいと思います。

★あらすじ

第2次世界大戦中、デズモンドドス(アンドリュー・ガーフィールド)は軍に志願したにも関わらず、上官の大尉(サムワーシントン)や軍曹(ヴィンスヴォーン)たちの命令に反して、銃を持つことを拒否する。
子供時代の苦い経験から、人を殺めることを禁じる宗教の教えを固く信じていたのだ。
さらに、毎週土曜の安息日を主張したこともあって、上官や同僚(ルークブレイシー)は彼につらく当たり、遂には軍法会議にかけられてしまう。
妻(テリーサパーマー)と父(ヒューゴウィーヴィング)の助けにより、裁判の結果、デズモンドは武器を持たずに戦場に赴くことを許され、希望していた衛生兵となることができた。

1945年、デズモンドの部隊は沖縄へと派遣され、150メートルもの絶壁のある“ハクソーリッジ”(前田断崖)での戦闘を命じられる。
一度は断崖領土を占領するも厳しい戦況に米軍は退却を余儀なくされる。
その最中、負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たった一人で戦場へ留まることを決意する。
その夜に「もう一人…もう一人…」と呟きながら敵の日本兵すらも治療を施す。
救出した兵士の数は75人にも上り、中には彼を冷遇していた上官もいた。
無事に帰還して来たデズモンドの部隊に再出撃の命令が下る。
しかし、その日は安息日に当たっていた。
今や隊からも一目置かれ、士気を大きく左右する存在になっていたデズモンドが下した決断とは…


映画の前半は主人公の子供時代から、軍隊に志願し、訓練を経た後で太平洋戦線に派遣されるところまでが描かれ、後半は沖縄戦を描きます。

このあらすじからも明らかなように、デズモンドドスが闘ったのは敵兵だけではありませんでした。
信仰心に対する自分自身の心の揺らぎ、自分を排除しようとする軍隊、家庭に不幸をもたらした父親との闘いでもあったのです。

★本作の戦場描写は残酷すぎるのか

2016年11月の『ハクソーリッジ』全米公開後は、一時的にせよ、一部の日本人映画評論家によって戦場の残酷な描写ばかりが話題になってしまったのは残念でした。
まず、あらすじをご覧いただければお分かりいただけるように、『ハクソーリッジ』は単なる戦争アクション映画ではありません。
戦場は主人公が闘いを繰り広げるステージの一つに過ぎないのです。

確かに『ハクソーリッジ』には、残酷で生々しい戦場描写のシーンがあります。
ただ、同様な戦場シーンは『ハクソーリッジ』に限られたものではなく、スピルバーグの『プライベートライアン』以降、ハリウッドで制作された戦場での戦闘シーンを描いたほぼ全ての作品に共通しています。

映画を見た後の個人的な感想ですが、『プライベートライアン』『ブラックホークダウン』『硫黄島からの手紙』あるいは『フューリー』などの映画と比べて、『ハクソーリッジ』の戦闘シーンが際立って残酷だとは思いません。

そもそも残酷な描写は、その背後にあるテーマ抜きには批評できないはずです。
スプラッターホラーの『13日の金曜日』と歴史ドラマの『パッション』の残酷シーンを比べても意味がないのと同じです。
スピルバーグは14歳の時に40分の戦争映画を制作していますが、爆破シーンの砂ぼこりを前に兵士が倒れるだけでは戦争の悲惨さが伝わらないことを理解したと言われています。

リアルな戦場描写は、人間が瞬時に「物体」に変化するというむごたらしさを表現する手法の一つであって、特殊効果撮影の技術的進歩によって低予算化とリアリズムを同時に追及することを可能にし確立された手法です。

それらの手法が使われる理由は、シーン毎のテーマにマッチするからであって、メルギブソン本人のパーソナリティとは一切関係が無いと思います。
この点を面白おかしく批評する日本の映画評論家は、映画の興行的側面を理解したうえで解説しているのでしょうか?
肉体的な痛みを表現することで反戦を訴えるにしても、それを強調しすぎては観客は離れていきます。

★本作の日本兵の描き方とメルギブソンのインタビュー

メルギブソンは、日本人に対して同情もしていなければ、ことさらに悪魔化するような描き方もしていません。
アメリカ海軍協会が行ったインタビューで、メルギブソン本人がこう答えています。

インタビュアー「この映画は日本を敵として描いていますが、日本に対して同情的ではありません。日本の観客に映画がどのように受け止められると思いますか」

メルギブソン「映画を見てもらえば直ぐにわかってもらえると思いますが、この映画の主人公はどちらかの陣営ではなくて、一人の平和主義者なんです。実際に、彼は自軍の兵士だろうが日本人兵士だろうが、差別していません。彼は戦争という概念の中で陣営を超越した存在なのです。」

沖縄戦で日本軍が見せた激しい抵抗によってアメリカ政府が原爆投下を決断したという学説や政治的なテーマにも一切触れていませんし、民間人が多数犠牲になったことにも触れていません。
一方、日米の兵器(ボルトアクション式ライフルと半自動小銃)の差や、劣勢に立たされた日本軍の戦術などは極めて史実に描かれていたと思います。

日本兵が敵を出し抜こうとするシーン、事実かどうかはともかく衛生兵を狙い撃ちするという日本側の戦術に言及するシーン(描写は無し)がありますが、それは味方の死体を盾にして突撃するアメリカ兵のシーンと同様、死を前にした人間の性(さが)を描いたものであって、ことさらに日本兵の狡猾さ、残酷さを強調するようなものではありませんでした。

メル・ギブソンはプロの映画監督として、主題との関係性が希薄な要素を強調して観客を混乱させたり、もともと低予算な撮影費用を無駄にするような愚かな行為には関心が無かったと思います。
そもそも10年振りの監督業でリスクは犯せなかったでしょう。

『ハクソーリッジ』はポリティカルスリラーやアクションスリラー、ましてや単純な戦争アクションではなく、信仰心の力をテーマにしたドラマなのです。

★本作はヒットしたのか

$1=¥110換算で…
全米→約74億円
海外→約119億円
世界⇒約193億円

本作の予算は46億円ですから、これは大ヒットと言って良い数字でしょう!
もちろん海外興収には、市場規模で世界4位(全世界の映画市場で約4.5%)に位置する日本の興行収入は含まれていません。

ちなみに、去年11月から公開されている中国の興行収入は68億円!
全世界の興行収入の36%を稼ぎ出しています。
中国でヒットした理由については、下記を参照してください。

★本作の日本公開を実現した配給会社キノフィルムズとは?

本作の日本のディストリビューターとなったキノフィルムズに触れておきたいと思います。
ハウスメーカー・木下工務店でおなじみ㈱木下グループホールディングスの傘下にある映画製作・配給会社です。
最近の配給作品を見ると『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』『パトリオットデイ』など比較的エンターテイメント色が薄い歴史モノ、文芸モノ、言葉を変えれば爆発的ヒットが期待できない作品が多いようです。

キノフィルムズが『ハクソーリッジ』の2017年6月24日の日本公開を発表したのは、第73回ヴェネツィア国際映画祭で2016年9月4日に『ハクソーリッジ』が初公開されてから実に5か月後の2月20日でした。

ただでさえマーケティングが難しい歴史もの、太平洋戦争ものである『ハクソーリッジ』の舞台は、政治的に扱いが難しい沖縄です。
しかも昨年の全米公開後にはテーマと直接関係ない残酷シーンばかりが話題にされたとなると、アカデミー賞のノミネートが発表されるまで買い付けに慎重になったのも理解できます。
日本の洋画ファンは、キノフィルムズの英断に感謝すべきでしょう。

★本作に関する5つの疑問

☆疑問①:本作の映画化権取得まで、なぜ55年もかかったのか?

一発の弾丸も撃たなかったデズモンドドスが1945年にアメリカ軍の最高勲章メダルオブオナーを与えられるという奇想天外なストーリーにハリウッドが興味を示さないはずがありません。
それでは、なぜ映画化にこれほど長い時間がかかったのでしょうか?

結論から言うと、戦争の英雄扱いされることを嫌ったドスが、なかなか映画化に応じなかったからです。
2000年に、ついにドキュメンタリーの映画化権を獲得したテリーベネディクト(余談ですが『オーシャンズ11』でアンディガルシアが演じた悪役の名前の由来となった人物です)は、当時80歳になっていたドスに次のように話したそうです。

あなたのメダルオブオナー受勲の物語は、例えるなら”大物を釣り損ねた釣り人の話”みたいなもので、とても信じられない話なんです。

あなたがこの世を去った後では、みんなきっとこんな風に言うはずです。
「そんな大げさな話、だれが信じるか」って。
だから、あなたが生きているうちにどうしても映画化したいんです。

2004年に公開されたドキュメンタリー映画『the conscientious objector(良心的兵役拒否)』は批評家に好意的に受け止められ、2006年に他界したドスも大変満足していたと伝えられています。

なお、この作品はハイビジョン撮影された初の長編ドキュメンタリー映画となり、日本のパナソニックとキャノンが技術面と資金面で協力しています。
本作のエンディングに使われている実際の映像は、このドキュメンタリー映画の一部です。

☆疑問②:本作の当初企画は子供向け映画だったのか?

ドキュメンタリー映画が成功した後で、一般の劇場映画として再度映画化の企画が持ち上がり、日本のホラー映画『仄暗い水の底から』のリメイク作品でジェニファーコネリーが主演した『ダークウォーター』のプロデュースを手掛けたビルメカニックが映画化権を買い取ります。

その後、『ナルニア国物語』などの子供向け映画で有名なウォールデンメディアが、メカニックから映画化権を買い取りますが、PG-13指定(13歳未満の鑑賞には、保護者の強い同意が必要)にこだわった為に、企画は暗礁に乗り上げてしまいます。

ウォールデンメディアとしては、戦争と信仰について真正面から取り上げるのではなく、例えば、同じくPG-13指定の『戦火の馬』のような、家族そろって楽しめる感動的な人間ドラマを目指したのかもしれません。

なお、『プライベートライアン』『ブラックホークダウン』『硫黄島からの手紙』『フューリー』等の作品は、全てR指定(17歳未満の観賞は保護者の同伴が必要)となっています。

☆疑問③:本作はアメリカ史を描いた作品なのに、なぜオーストラリアとの合作になったのか?

一時はお蔵入りの危機に陥った『ハクソーリッジ』ですが、ウォールデンメディアから映画化権を買い戻したビルメカニックが、オーストラリアとの合作という道を選択したことで息を吹き返します。

出演者やスタッフにオーストラリア人を起用し、撮影をオーストラリア国内で行うなど一定の条件を満たしたことで、オーストラリア政府から税制面の優遇措置を受けることができたのです。

かつてオーストラリアで暮らし、オーストラリア映画『マッドマックス』でスターになったメルギブソンに監督のオファーがあったのも、こうした背景と無関係ではなかったようです。

なお、製作拠点はシドニーのフォックススタジオ内に置かれ、主なロケーション撮影は、かつてメルギブソンが住んでいたオーストラリアのニューサウスウェールズ州で行われました。
また、メインキャストのアンドリューガーフィールド、ヴィンスヴォーン、サムワーシントンを除くほとんどの出演者はオーストラリア人です。

☆疑問④:本作のテーマは?~メルギブソンのインタビューとキリスト教系雑誌のレビューで読み解く

本作の中心的なテーマは、信仰であると言って良いと思います。
さらに踏み込んで言えば、「信仰と現実の狭間でどのようにバランスを維持すべきなのか?」という問いかけでしょう。

その一方で本作は日本人の感覚で言う反戦映画とは異なる作品だと思います。
平和主義者だったドスを主人公にして描かれた本作が反戦的な立場をとっていることについては異論の余地がありませんが、国を守るために戦うという戦争行為自体は否定していませんし、糾弾もしていません。

そうした立場は、ドスが所属していたセブンスデーアドベンチスト教会もあるいはアメリカのキリスト教主流派も同じであると言って良いと思います。

♢ドスが所属したセブンスデーアドベンチスト教会は本作をどのように評価しているのか?

ここでアドベンチスト教会と本作の関係について、簡単に整理しておきましょう!

アドベンチスト教会は、信者数の人口比でアメリカ国内最大の46.5%を占めるプロテスタントの中では少数派です。
その理由についてここでは詳しく触れませんが、いわゆる聖書主義を説いていることが関係していると言われています。

なお、アドベンチスト教会は本作の中で大きく取り上げられた「汝、殺すべからず」という聖書の一節や、土曜日を安息日として定めた教え等と相容れない軍隊の規範については、その対処の仕方を信者の自主性に任せてきたと説明しています。

ちなみに、アドベンチスト教会は自らのWEBサイトで資金面も含め本作の製作に教会として関与していないことを明記しています。
しかし、その一方では本作を布教活動に役立てようと、映画が自分たちの教えを正確に描いているとお墨付きを与えたうえで「映画を観た人からの質問にどのように答えたらよいか」という信者向けのガイドを提供しています。

♢メル・ギブソンが考える本作のテーマとは?「『ハクソーリッジ』は信仰の自由に関する難解なパズルだ」

敬虔なクリスチャン(カソリック)であるメルギブソンは、キリスト教信者向けの雑誌「クリスチャニティトゥディ」のインタヴューに応じています。
信仰の自由について聞かれたメルギブソンは、『ハクソーリッジ』は、もし自分がドスと同じ立場に立ったらどうするか観客に考えてもらうための『難解なパズル』だ、と話しています。

人々は自分たちが何者で、相手が何者なのかを見極めることを求められます。
他人との大きな衝突や軋轢なしに、そんなことができるでしょうか?

私はこの種の衝突こそが、人生の真実だと思います。
自分の信念を維持しながら、どうしたら自分を取り巻く物事と共存できるのか、その最善の方法を探ることがもっとも重要なのです。

♢アメリカのキリスト教徒向け雑誌「クリスチャニティトゥディ」は本作をどのように評価しているのか?

雑誌のレビューがこちら。

本作のメッセージは、政治的と言うよりは人間的なものだ。
そのメッセージは、やせっぽちの平和主義者とG.I.ジョーが互いに容認しあうだけでなく良い友達になれるような世界について、深く考えさせるものだ。

それは、映画の中でドスと、最初はドスの信仰心を馬鹿にしていたものの後に尊敬するようになる古参兵で、まるで殺人兵器のようなスミティ(ルークブラセイ)とのやり取りの中で探求されるテーマである。

大幅に異なる生い立ちと信条を持った人々は、一方に極めて偏り、かつ細分化された共和国の中で、平和裏に共存することは可能なのだろうか?

この映画が提示したようにそれが可能だとしても、それは、私たちが互いに耳を傾け理解し合おうとする関係性の中でのみ起こることだろう。

☆疑問⑤:『ハクソーリッジ』はなぜ中国で大ヒットしたのか?

本作は2016年11月からアメリカで公開され、最終的な興行収入は6,720万ドルでした。
それに対し、ほぼ同時期に公開された中国では6,211万ドル、全世界の興行収入1億7,530万ドルのうち35%を占める大ヒットとなりました。

それでは、なぜ本作は中国でここまでヒットしたのでしょうか?
容易に思いつくのは「”抗日戦争”を描いた映画だから」という仮説です。

今回は…
①中国の映画情報サイト・豆瓣の観客レビュー
②アメリカのQ&Aサイト・クオーラに投稿されたQ&A
③中国の新聞・環境時報の記事
で検証します!

①映画情報サイト・豆瓣

豆瓣は、日本のYahoo!映画のような映画情報サイトです。
本作の観客レビュー・スコアは、8.7/10と極めて高い評価を得ていました。

ちなみこのレビュー・スコアの元になっているのは、なんと24万5千人分の投稿結果です。
アメリカの人気映画情報サイトRotten Tomatoesの場合、『ハクソー・リッジ』の観客レビュー数は4万9千人(ちなみに支持率は92%)ということですから、中国の映画熱の高さがうかがえます。

豆瓣の本作観客レビューの中で最も支持を集めていたコメントの一部を抜粋します。

「印象深かったのは最初の戦闘の後で迎えた最初の夜に、主人公と仲間の兵隊が2人で塹壕にいるシーンだった。仲間の兵隊が主人公に缶詰を勧めると主人公は肉を食べないからと断った。それを見た私は、ああ、なんて立派な人なんだと思った。」

「彼の信仰は戦争を変えられなかったが、戦争も彼を変えることはできなかったのだ。」

このコメントなら私も”支持”ボタンをクリックしているでしょう。

他のコメントについても、支持の多いものから順に目を通したのですが、映画のテーマとは直接関係ないに批評やコメントが目立ちました。

例えば、日本軍はなぜ崖の上から米軍を攻撃することを思いつかなかったのか、といったような戦争そのものに関するコメント、あるいは宗教的テーマと”抗日戦”を同時に描いたことに対する不満、さらには信仰が奇跡を起こしたかのような表現をジョーク扱いするコメントなどもありました。

あくまでも個人的な印象を元に、それらのコメントを取り纏めるとすれば「”抗日戦争”を描いた作品という事で劇場に足を運んだが、映画の内容は想像していたものと違っていた。ただ結果として映画は気に入った」というのが、平均的な感想ではないかと思います。

なお後ほどご紹介する中国の新聞『環境時報』の記事でも取り上げられていましたが、『ハクソー・リッジ』が実話だと知らないで劇場に足を運んだ観客が多かったようです。

②アメリカのQ&Aサイト・クオーラ

次にチェックしたのが、アメリカのQ&Aサイト・クオーラ。
日本のYahoo!知恵袋のようなサイトですが、大きな違いは質問者も回答者も実名を公表しなければ参加できない点です。

このクオーラに「なぜ本作が中国でヒットしたのか?」という、まさにそのものずばりの質問が掲載されており、すでに5人から回答が寄せられていました。
その一部を抜粋してご紹介します。

「『ハクソー・リッジ』はとてもいい映画ですし、世界中で人気を集めるべき作品だと思います。ただ、中国人にとってそれは特別な意味があります。映画を見た多くの人は、日本の兵隊がいかに残酷か知ることになるからです。
(中略)
この戦争(中国では抗日戦争、第二次世界大戦の一部、と呼びます)は中国人にとって特別な意味があるのです。
そしてこのトピックについて扱った素晴らしい映画であれば、中国では人気を集めるのです。」

回答は全部で5つありましたが、次にご紹介する1つをのぞき、全て”抗日戦争”が描かれていたことを中国における大ヒットの理由に挙げています。

「なぜならそれが、高い予算と品質で製作されたハリウッドの大作映画だからです。中国ではここ最近、ほとんどのハリウッドの大作映画が人気を集めます。国内の映画産業は製作技術を習得途中なのです。」

宗教に関する側面について、肯定的に触れた回答は見当たりませんでした。

「なぜなら、それが第二次世界大戦、とりわけ中国人が言うところの抗日戦争に焦点を当てたものだからだということ。そしてあきらめない精神について描いたものだからです。」

サンプルの数としては決して多いとは言えませんが、仮説を裏付けるような内容が目立ちます。『ハクソーリッジ』が中国でヒットした最大の理由は、最後に紹介するこちらの回答に集約されていると言えるかもしれません。

「第1に戦争描写がリアルだから、第2に日本兵を叩きのめすから」

③中国共産党機関紙「人民日報」の国際版「環球時報」

2016年の12月14日、中国共産党機関紙「人民日報」の国際版「環球時報」のオンライン版に「メルギブソン監督の『ハクソーリッジ』が中国のボックスオフィスを席巻したことで、議論が巻き起こっている」という記事が掲載された。

この記事では”抗日戦争”としての『ハクソーリッジ』という扱いは、”ほぼ”影を潜めています。
タイトル通り『ハクソーリッジ』公開後の話題をレポート形式で取り上げていますが、そこは中国の新聞。
しっかりとアジェンダが見え隠れしています。

記事を要約すると以下のようになると思います。

「必見の映画」としてネット上でも話題となった『ハクソー・リッジ』が実話だということを知らなかった観客は、それがキリスト教の宣伝映画だと思ったという。この背景には中国で最も人気のあるジャンルの一つである第二次大戦を舞台にした戦争映画に見られる非現実的な戦争描写がある。
勝利の喜びを描くことに力点が置かれる中国の戦争映画と違い『ハクソーリッジ』は、最前線で戦う事の名誉について描かれている。同じ戦争映画でもアンリー監督の『ビリーリンの永遠の一日』は空想の物語で普通の人物を描いているのに対し、『ハクソーリッジ』は実話なのに超人的な英雄を描いているのは興味深い。
メルギブソンの戦争映画が尊厳、自己犠牲、あるいは奇跡を描くのは彼がカトリック信者だからだ。実際の軍隊では、人を救う前にまず自分の身を守らなければならないし、自分の身を守るためには誰かが戦わなければならない。
2013年の『ジャンゴ 繋がれざる者』の公開差し止め対応でも明らかなように、中国政府は外国映画の暴力のレベルについて審査してきた。
『ハクソーリッジ』は中国で初めてレーティング(12歳以下の子供は親の同伴が必要)が設定された映画となった。ただ、正式なレーティング・システムへの移行期ということで厳格な適用はされなかった。ネットではその理由が「日本軍が登場する第二次大戦の映画だったからなのでは?」というジョークがささやかれた。  

自国の”抗日映画”の暴力表現を批判したり、まかり間違っても厭戦気運が蔓延しないようにするためか、戦わない兵士の活躍を描いた『ハクソーリッジ』という映画が、デズモンドドスやメルギブソンという熱心なキリスト教徒の存在に支えられた「特別な映画」であると強調するあたりにこの記事の目的が見え隠れしています。

なお、中国政府は依然としてバチカン政府と断交状態にありますが、政府の管理下にある教会を通じてのキリスト教布教活動は認められています。
本作のテーマである信仰についても、問題無しと判断されたのでしょう。

中国政府が問題にしたとすれば、やはり暴力的な表現だったと想像します。
確かに本作の暴力的な表現は『ジャンゴ 繋がれざる者』のそれとは表現手段としての目的が大きく異なりますが、これまでの検閲基準に照らせば、何らかの形で規制の対象とされても不思議ではなかったと思われます。

ただ、記事の中で「ネット上のジョーク」と断りを入れた上で記者自らが紹介しているように、暴力表現に関する規制を免れた理由が、中国で最も人気のある映画のジャンルの一つである第二次世界大戦の対日戦争を扱った戦争映画であったことと無関係だったとは考え難いのではないでしょうか。

なお、中国政府は『ハクソー・リッジ』公開当初は上映期間を短く設定し、その後期間を延長するという措置を取っています。
収益面、政治面でのメリットが大きい”抗日戦争”映画としての『ハクソーリッジ』ですが、ロングランを決定する前に暴力表現が観客に与える影響を慎重に見極めたかった、ということかもしれません。

★最後に

本作は完成するまでに、さらに言えば、日本で公開されるまでに、かなり困難な道のりを歩んできたことが十分なぐらい理解できると思います。

現実に私達が暮らす地球で起こった戦争の存在を知ることも大切だと言われるが、再び同じことをしてはいけない強い使命感をもった人間が、映像に再現されたものを、実際戦場に出向き様々な思いを背負って戦わなければならなかった人々の気持ちを思うと胸が痛む。

『沈黙-サイレンス-』と『ハクソーリッジ』という、いずれも日本を舞台に信仰を描いた映画が公開された。
この二つの作品には、公開までに時間がかかったという点や、どちらもアンドリューガーフィールドが主演しているという共通点もある。

不思議な偶然だったのかもしれない。
ですが、日本の映画ファンとして、我が国を生きる日本人として、また戦争という人類史上最悪の発明をした人間として、忘れてはいけないテーマなのだと本作を通して強く刻めさせられました。

★最後の最後に

本作に登場するヒロイン役のオーストラリア人テリーサパーマー!
モデルもこなす31歳の美人女優で、「呪怨」「魔法使いの弟子」「ウォームボディーズ」「X-ミッション」「きみがくれた物語」「ライトオフ」など様々なジャンルをこなす。
オーストラリアからハリウッドに移り、これからが楽しみな女優さんなので、知らない人はチェック!
こんなに勇敢な人が実在したのかと。そこまでする信念や理由ってなんだろうと、人間として畏敬。
映像はメル・ギブソンだけあって、ホラーの驚きにも似た恐怖があった。
アンディはよき俳優になってきたなぁ。
サム・ワーシントンも年齢重ねていい具合に醸してきた。
あらん

あらんの感想・評価

3.2
Interesting, ww2 from the American view. Wondering if all the enlisted people should do such tough training.
CHIKUWA

CHIKUWAの感想・評価

4.7
武器を持たずに戦地へ向かう主人公。持っているのはモルヒネや包帯。彼の使命は傷を負った仲間を一人でも多く助けること。
負けそうになる心を、もう一人…もう一人…という言葉で奮い立たせて再び助けを待つ仲間の元へ駆け出す。
たとえ敵が近くに居ようとも。強い。強すぎる。武器を持たない兵士は誰よりも強かった。
戦闘シーンがリアル過ぎて胸が痛い。もうやめてくれ!何度も心で叫んでいた。戦争の無意味さをヒシヒシと感じさせる意味のある映画でした。
しか

しかの感想・評価

-
沈黙のときのアンドリューガーフィールドとあわせて、厳格なメソッドアクターもシャンプーはするらしいということをメモ。

上の人間が神妙な顔でハラキリしてるのがちゃんちゃらおかしかった
戦闘シーンがすごいよと聞いて。
でも私の中では、プライベートライアンは越えませんでした。小さい頃に見たので脳裏に焼き付いてて…。
ストーリーは感動しました。
激戦地の最前線に突入するとか、バンザイ突撃とか、
元々兵隊でもないのに、
わずかの期間トレーニングしただけのほぼ民間人がするんだから。
自分には絶対出来んなと思う。
全裸で懸垂にも感動しました。

前半が家庭環境はともかく、牧歌的で自然がすごく綺麗で、
主人公とヒロインの可愛らしい恋愛があったりして、
すごい嫌な予感が膨らみます。
この後の対比がすごいんだろうなって。

北米版Blu-rayで視聴。日本公開したらまた見に行きます。
早くも今年No. 1候補の映画と出逢ってしまった。戦争映画としては映画史に残ってもおかしくないレベルの大傑作。
戦争映画としては珍しく、主人公が闘わないというスタイルを通す。
流石はメル・ギブソン監督と言うべきなのが死体の演出。ここだけでもかなりの予算を費やしているのではないかと思うくらいリアルで吐き気を催してしまう人もいるのではと思うくらいのものを作り出している。グロには注意が必要かもしれない。
ただでさえ孤独になってはいけない過酷な環境で自分を貫き通すことの強さ、それが徐々に認められていくことの凄さ、折れない心を持つことが自分を変えるのではなく周りを変えていくことなんだと思わせてくれる。
2017年アカデミー賞にノミネートされた映画の中では今のところ断トツで好きだし、今後もずっと自分の中に残り続ける傑作であることに間違いはないだろう。
yuninyoko

yuninyokoの感想・評価

2.5
もっと純粋な衛生兵映画かと思ったらすごいグロいし戦闘場面が長い、長すぎる。あんな高い崖登らされて戦うなんて本当に地獄。
ゆうこ

ゆうこの感想・評価

4.0
私は信仰心は全くといっていい程もってない

この映画は信仰心によって武器を持たずに兵志願をした人の実話の話し
衛生兵になり、沖縄戦争に行くのだけどしぶとい日本兵に押され一時待避する、しかし主人公は一人残り負傷した兵士を 後一人助けさせてください。
と祈りながら兵士を助けていく。

この映画は日本兵は悪党として描かれています。
映画とはいえ、あまりいい気持ちはしませんでした。
だけども、かなりリアルに戦争とゆうものを描いているし見応えはあります。
いろんな事を考えさせられました。