ラブラドール

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのラブラドールのレビュー・感想・評価

3.8
作家を目指した頃から、「ライ麦畑でつかまえて」や「フラニーとズーイ」を書き上げて著名な作家となった青年期のサリンジャーを描いた伝記的な映画作品。
アマプラで鑑賞しました。

「ライ麦~」は学生の頃に読みましたが、読んだ当時の感想としては、主人公のホールデンの言葉があまり好きではなく、全く心に響くような作品ではありませんでした。訳が悪いのかと思い村上春樹訳版の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」もその後に読みましたが、やはり同じ印象。
世の中の事を知らない若者(本人は分かっているつもり)が周りの全ての人や物事を斜め上の角度から観て、心の中でひたすらこき下ろしていくような印象の作品で。
当時は(今でも)若者に好まれる作品でベストセラーになったようですが、初読した当時は自分も学生だったので、全ての若者に支持される作品ではないのだと自分は思ってます。

代表作でもある「ライ麦~」がそんな印象だったので、それ以来サリンジャー作品を読むことはなかったのですが、先月観た映画作品「マイ・プレシャスリスト」の主人公の女性がサリンジャーの「フラニーとズーイ」が最も好きな本ということを言っていたので、自分も「ライ麦~」以外も読んでみようと思い立ち、その「フラニーとズーイ」(村上春樹訳)を読んでみました。
結果、「フラニー~」の感想もやっぱり肌に合いませんでした(^^;)
世の中を斜め上からの描写は相変わらずで、それに少し宗教的な内容が加わったような内容。やはりサリンジャー作品は苦手なようです。

随分脱線してしまいましたが、サリンジャーの人物像を描いた本作。
この作品を観ると、彼が「ライ麦~」を執筆した背景や、彼の気持ちがよく分かります。
作品を書いても掲載を断られ、掲載OKの返事をもらったかと思えば大人の事情で内容に修正を求められ。
そんな中、戦争が始まり兵役も務めています。
戦争前にできた彼女はサリンジャーが戦争にいっている間にチャップリンと結婚(本当の話です)、それを戦地の新聞で知らされる、戦争では仲間が死に彼自身も退役軍人として精神を病み。
こういう経験から世の中をまっすぐ素直に見られなくなってしまったのだと思います。
このような背景の中で書き上げたのが「ライ麦~」
一躍有名になり、大人達からもてはやされ、その居心地の悪さから田舎暮らしをするサリンジャー。
人を避けて生活する彼の気持ちも本作を観てよく分かりました。

これまで「ライ麦~」を読み、最近「フラニー~」を読んでサリンジャー作品はイマイチ自分には合わないと思っていましたが、この映画作品を鑑賞してサリンジャー自身の事を知った後で読めばまた違った感想だったかも知れません。
また何年かした後に「ライ麦~」、「フラニー」を読んでみようと思います。

サリンジャー作品を読んだ事のない方で、これから読んでみようと思う場合は、先にこの映画作品を鑑賞した後に読むことをおすすめします!