【本と映画の話】
『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』観ました。
20世紀のベストセラー「ライ麦畑でつかまえて」の作者・サリンジャーの話。
生と死を超越した次元にまで“書くこと”を昇華させた一人の芸術家の話。
自分よりも自分である主人公を本の中に生み出した闘い続ける人間の話。
彼は、手にしたものがペンであっても、銃であっても、創作者であり続けた。
文学的知識をとっくに凌駕した域にこの映画は存在する。
社会現象を巻き起こした人気作家の中から、一人の孤独な人間がぐっと引き出される。
スクリーン越しに彼と対峙した私は息を呑む。体が強ばる。逃げられなくなる。
サリンジャーが言葉を生み出すたび、私は言葉を失った。
彼の“声”が聴きたかった。
物語(ストーリー)を守るために、声にならなかった“声”が聴きたかった。
物語に光を当てる本とその作者を称えるかのごとく、映画は“声”に光を当てていた。
本と映画。
お互いがお互いで在り続け、それぞれが最も崇高な比率で描かれた螺旋がそこにあった。
なんて美しいのだろう。
こんな美しい芸術を映画館で体験できるとは、なんて幸せなことなのだろう。