ストーリーの完成度という点ではアラが目立つが、それを打ち消して余りあるのは個人的にこの映画に登場する音楽に惹かれたからというのもあるのだろう（従って、この点数は私の好みが多分に反映されていることは断っておかなければならない）。つまり、かっちりしたアンサンブルを組み立てて作るのではなく柔軟に様々な要素を取り入れながら作品として組み立てたらこうなった、という感じ。役者同士の即興の演技とも思われる自然体なコミュニケーションや、彼らが奏でる音楽、そしてこの映画の舞台となっている講演の桜並木や湖といった要素がオーガニックに絡まり合っており、結果として好ましいグルーヴを生み出すことに成功していると思う。だからこそオチのつけ方は蛇足というものでは……と思わなくもないし先述したツッコミどころも気になるのだけれど、不思議と後味は爽やかな作品に仕上がったのではないかと思う。
