RiN

続・深夜食堂のRiNのレビュー・感想・評価

続・深夜食堂(2016年製作の映画)
3.5
『こんなめしやがあったらなあ』

今日日、深夜残業なんて珍しくもない。
そんな、仕事の詰まった肌寒い帰り道、疲れを引きずって路地裏を歩く。
お腹がすいたな。
残業中に食べたカロリーメイトの粉っぽさが、まだ口の中でざらついている。一緒に流し込んだ缶コーヒーの無遠慮な甘さは、喉の奥でヒリヒリした。
ああ、こんな時間にあったかいご飯を出す店なんてないよなあ、居酒屋の賑やかさには耐えられそうもないな、でもお腹はすいたな、またコンビニかな。深夜帯のコンビニのアルバイトくん、いつもこの世の終わりみたいな顔をしているんだよな。
そんな時間、目の前の店の引き戸ががらっと開く。寡黙そうな強面の店主は暖簾をかけて、行灯に火を入れて、立ち止まったわたしに気が付いて声をかけた。
「いらっしゃい、出来るもんなら、作るよ。」
吸い込まれるように座ったカウンター席、古いけど清潔な店内、少ないメニューの張り紙、キョロキョロと見渡していると、さっきの寡黙そうな店主が、なんにする?と聞いてきた。
メニューにあるのは、豚汁定食。
豚汁、ずいぶん食べてない。木枯らしの夜にはうってつけのように見える。頼むと、店主は、あいよ、と返して板場に消えていく。
テレビも有線もかからない静かな店内、トントンと野菜を刻む包丁の音がする。携帯も開かず、静かに料理を待っていると、慣れた様子の常連客がふたり、引き戸を引く。
「マスター、とりあえずビール。」
「あいよ」
こんなに純和風な作りなのに、マスター、なんだ。そんなルールをひとつ覚え、常連客の与太話にこっそり笑っているうちに、味噌と豚の脂のいい香りがしてくる。
「おまちどおさま」
目の前に、湯気のたつ飯碗と汁椀、素朴な色の漬物が並ぶ。無骨な手が並べる、つやつやと輝く飯粒と、あさつきの散らされた豚汁。
「いただきます。」
明日からも、頑張れそうな気がした。

※本編とは全く関係ありませんが、だいたいこんな感じです。
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