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鋼の錬金術師のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

鋼の錬金術師(2017年製作の映画)
3.0
遡ること8年前、甥が読んでた単行本を軽い気持ちでめくってみたのが運の尽き。表情豊かで躍動感あふれる絵柄、箸休め的に挿入されるギャグのちょうどよさ、ダークファンタジーと称される壮大かつ緻密なストーリー。どれをとっても間違いなく名作。あっという間にどハマりし、つられて夫も陥落し、全巻揃えてアニメも欠かさず視聴して、滂沱の涙でもって完結を見届けた思い出深い作品を「ピンポン」の曽利文彦が映画化するというのです。

映画版ピンポンと言えば、15年前時点で既に人類最速ラリーの映像化を果たし、電気やスパカやブンブンを効果的に配することで脳がトロける快楽成分をも生み出すという離れ技をやってのけたゼロ年代の金字塔的作品。あの監督ならきっと、エドの錬金術もアルの甲冑も大佐の焔も完璧に再現してくれるはず!…と思ったんです。何それ最高じゃないですか、と。

しかし、製作発表から公開に至るまで不安の声はどんどん大きくなる一方。配役やらロケ地やら衣装やら、見てもいないのにやいやい言うのはおかしくね?どうなのよ?というわけで、公開初日に一家を代表して人柱になってきた次第であります。以下、感想。

CG、頑張った。キャストも頑張ったほうだと思う。ただ、原作27巻の序盤をあちこち端折って圧縮しまくった脚本は耐え難かった。命に関わる結末までの経緯や葛藤をどんどこ削るし、説明的な台詞がやたら多い割に心理描写が足りてないもんだから、クライマックスが薄くてペラくてどうしようもなかったです。原作未読でこの日を迎えたのであれば、うまい具合にコンパクトにまとまってると思えないこともないのかもしれません。が、原作ファンの自分からすると「ちーがーうーだーろー!」の連続でした。そもそもの話として、登場人物これしか出てきてないっつうのに、あいつもこいつもあっさり退場しちゃって大丈夫?あのエンドロールの最後を見る限り、これ、続編撮る気満々ですよね?どうするつもりだ。いや本当に。

ウィンリィが機械鎧技師として活躍する姿を描いていないせいでただの幼なじみにしか見えないこと、にもかかわらずあちこちしゃしゃり出てくるせいで危険な目に遭い足手まといになり展開上ひどく邪魔な存在に堕していること。タッカーにあの台詞さえ言わせておけば満足なんだろ?と言わんばかりの早すぎる展開、あれだけ執拗にタコ殴りにされたにもかかわらず何故か特別出演扱いの大泉洋。グラトニーよりよほど出演時間長かった気がするんですけどどうして…?蓮佛美沙子の凛々しさは良かったけれど軍人としてはあまりに線が細すぎた、そして無理やり金髪にする必要性が感じられなかった。マスタング大佐はサラサラの直毛であってほしかった。子役の演技とビジュアルがアレなのは如何ともしがたいとして、人体錬成の材料の字幕がガッツリ日本語なのは興醒めとしか言いようがなかった。地図とか本とか駅名とか墓石とか、全部アルファベットで統一してるんだからそこは合わせておけよって話。

唯一原作を超えたと言える真理のビジュアル、ヒューズの善良さ、ラストの妖艶さに救われました。
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