まぐ

鋼の錬金術師のまぐのネタバレレビュー・内容・結末

鋼の錬金術師(2017年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

個人的今年ベストの映画を決めるのには少し迷いましたが、ワーストは一瞬でした。
おそらく今年中にこれを超す映画は現れないだろうな…



以下、全て個人の感想です。



コスプレ感とかキャストが日本人云々とかこの際どうでもいい。これを面白いと思って世に送り出したなら相当ヤバイと思う。

全体的に、なぜ動作をつけないで台詞言わせる!?みたいなシーンが滅茶苦茶多く、会話シーンがタルすぎ。
ただでさえこの手の実写化作品は作品世界に没入しづらいのに、演劇みたいにセリフと表情だけで演技させるから演技臭さ全開。これは俳優のせいというより、台詞を喋る人を写し続ける素人くさいコンテと演技の指示を出す人の演出の下手さのせいだと思う。

例えそれを差し引いても画がつまらない。話す人を映したり、話題になってる道具や場所を映したり…とかは素人でも撮れる。工夫の余地が有り余っている。例えば新キャラの登場時はもっともったいぶるとか、あえて一部分だけ写して含みを持たせるとか、とにかく瞬間瞬間で先が見たい!と思わせる気概がまるで感じられない。必要なものを必要な分、あるいは余分に映すだけ。
カメラワークも動きがなく、全体として勢いがまるでない。戦闘シーンですら攻防にスピード感がなく、まるでターン制でも導入してるんじゃなかろうかと思わせる退屈さ。もっとお互い間髪入れず、必死の攻防を見せてくれ。ドラクエじゃないんだから。

各キャラの登場シーンも酷いもので、エドは原作のように手足を獣に噛まれて鋼の錬金術師!バーン!とかっこよく身分バレするが、そもそも獣の牙の殺傷能力を示すような描写がないから普通に牙が鋭くないのかな?と未見の人に思われてもおかしくないし、そのあとの群衆がアルを鋼の錬金術師だと勘違いする美味しいシーンにもなぜか不在だし。
アル「兄さんは錬成陣なしで錬金術を使えるんです」なんで台詞だけで説明する!?実際にエドがやってみせれば画的にも面白くなるやん!?そんで「誰が豆粒ドチビじゃ!」のくだりもやればええやん!?
そのあと教祖が逃げ出そうとしたところを大佐がバーン!でエド連行すればええやん!?
アルに関してはキャラ描写に大切な役割を果たす登場シーンにすげー無口でほとんど喋らない。兜が取れるシーンもサラリと流れる。初見の方にとってはインパクトのある絵なのに、非常に勿体無い。
ホムンクルスはありがたみも脅威も感じない出され方して、自分が未見だったら「なんだこのコスプレ集団?」ってのが第一印象だろう。
ウィンリィももっとインパクト残せた気がしてならない。遠くで立ち止まって手を振って「アル〜、おーい」からの駆け寄って「アル、久しぶり!」の流れはあまりに何もない。アルにくっつくのは可愛かったから、例えば謎の少女がアルに急に抱きついてくる。誰だ?ウィンリィだ!みたいな流れとか、急に機械鎧を壊したエドをスパナで殴りつける登場とかのほうがただ登場よりは面白くなるんじゃ?
大佐も、そういう出し方ならもっと司教がエドアルをピンチに追い詰めてから出して欲しい。全体的に言えることだけど、この映画にはピンチやサスペンスが圧倒的に足りず、見ててハラハラする場面がほぼない。

そもそも原作のシーンを薄っぺらく表層的に拾えるだけ拾って歪にはり合わせるストーリーの作り方が気に入らない。
原作のシーンで起こったことだけを拾っているので、まるで中身を伴わない。大佐が復讐のためエンヴィーを焼き殺す(実際にはエンヴィーは生きているが、大佐は100%殺す気だった)という、ある程度原作に沿って作るなら絶対やってはいけないことも起こっているし、一応ストーリーの大きな山場である人形兵たちがクソザコで死人が1人しか出ていなかったり、1つ1つのシーンはタルいのに移動が忙しなくエピソード毎に感傷に浸るわけでなくどんどん流れていったり、誰に向けたどんな面白みのある映画なのか理解に苦しむ。

ラストシーン、続編作るみたいな感じ出してたけど、このクオリティなら絶対にやめたほうがいい。やるならもっと拾うエピソードを絞って、誰に向けたどんな面白みのある映画なのかをきちんと定めて作って欲しい。


唯一良いと思ったのはタッカーやニーナのシーン。そもそも原作が滅茶苦茶面白いだけにそのままやれば面白いのは当たり前といえば当たり前だけど、急に無音になる演出だとか、キメラのリアリティはやはり実写ならではの良さがあったかなと。

あとアルのCGは凄くこだわりを感じた。エドアルの喧嘩のシーンなんて、山田くんの1人芝居には到底思えない。周囲の写り込みなどの細部にも妥協がない。
アルのCGらしからぬ存在感は監督のコメント通り見応えがあった。

あと特典の0巻は個人的には今まで顔が出たことのない〇〇の奥さんが出てきたというだけですごく価値のあるものに感じた。
荒川さんと監督のインタビューも、なんだかんだ楽しく読ませてもらった。
曽利監督のピンポン、好きだったのになぁ…どうしちゃったんだろうなぁ…
インタビュー読んだ感じ、監督も少し悔いが残っている感じで、もしかしたらスケジュール等色々あってこんな作品になったのかもな…
まぐ

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