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鋼の錬金術師のohassyのレビュー・感想・評価

鋼の錬金術師(2017年製作の映画)
3.0
「マスタングは長谷川博巳だと思う人RT」


原作マンガがかなり好きで、時々ふと読みたくなって結局そのまま一気読みすること数周。
絵がうまいしキャラもいいし、何よりこれだけ荒唐無稽なのに破綻のない、緻密なファンタジーもあまり知らない。
いったいどこまで設計した上で描き始めたんだろうか。
多分最後までだろうけれど。

日々の目の前のイベントや中規模な目的を提示しながらキャラクターを動かし、より大きなストーリーをゆっくりと動かしながらリンクさせる。
それはさながらスピードの異なる3本の時計の針のように、関係なさそうで実のところものすごく関係していて、12時間に1度だけ、ぴたっと揃う。
そして人は気づくのだ。
針と針は最初から連動していたこと、全て支配されていたこと。
人生の半日が消えてしまったこと…。
その時はもう遅いのだけれど。

そんな緻密さと怖さとダイナミズムに、納得できるキャラの心情とモチベーションが見事に絡み合い、サスペンスとアクションと人間ドラマと恋愛模様までを内包した、本当に本当に稀有な作品だと思う。
シリアスとコメディのバランスも絶妙で、読みやすさの重要なファクターのひとつだ。
未見の人はぜひ手にとってほしいけれど、これから体験できるなんてかなりうらやましことだ。

そんな原作に果敢にチャレンジした本作は、勇敢であったと思う。
蛮勇とは言うまい。
しかも25巻くらいの長編に対して2時間の映画で挑むには、とにかく削ぎ落としてそぎ落としてそぎ落として、作品の核を露わにした上で、ほとんどゼロのところから再構築して、原作者や関係者、出資者、さらにはファンを納得させなくてはならない。
容易ならざることだ。

ひとつ、映画の真理を言います。

「原作が面白ければ面白いほど、忠実に再現した映画はつまらなくなる」

とても不思議なことですが、これだけは本当に本当で、避けることができない事実。
ここでいちいち事例を挙げたりはしませんが、そういう事例をまとめた記事はいいかもしれませんね。

少なくとも自分にはこのプロジェクトを成功させる道が見えないけれど、十分な予算をかけられるのであれば、あるいはロードオブザリングのようにできるかもしれない。
あるいはGOTのような。
さもなくば、薄っぺらいキャラクター再現SHOWになってしまう。

どんだけお金かかるねん!
(でもアルはとてもよくできていたと思う)

今さら本作にケチをつけることはないけれど、原作を読んでいて、一人だけキャストが想像できるキャラがいたのだけれど、本作では叶わなかった。
やっぱりマスタングは長谷川博巳が良いと思うんです!
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