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バットマン:キリングジョークのmitakosamaのレビュー・感想・評価

3.7
ウワ〜!これちょっとスゴい。アメコミでここまでの含みを持たせた物語展開が出来るのかと感心した。

物語はバットガールのバーバラゴードンの視点で語られる。
序盤は叔父からマフィアのボスの座を奪い取った男が中々の暴れ者で、バットマンとバットガールで追う展開。
一般の(怪人じゃない)犯罪者だがそれなりに切れ者でブルースはバーバラに捜査から引くように促す。
認めて欲しいバーバラは言い争った挙げ句に、ヤッちゃう(笑)あらあら。しかも夜のビルの上で、悪魔の像の下で事に及ぶという意味深な演出が心憎い。
マフィアはムショに送るがバーバラは気まずくなってバットガール引退。

そしてジョーカーが脱獄。バーバラを撃ち、ジェームズゴードンを攫いバットマンを廃遊園地におびき寄せる。
ゴードンは真っ裸にされフリークスから痛めつけられるという屈辱の精神攻撃。だがバットマンを引き合いに出しジョーカーの狂気に一理あると思わせてしまう恐ろしさ。

そしてジョーカーの売れないコメディアン時代が描かれる。身重の奥さんが居て金のためにマフィアに雇われレッドフードとして薬品工場に。バットマンに薬剤に落とされジョーカーになる経緯が語られる。
後のトッドフィリップス版の実写ジョーカーもこの話を継いでいるが、この原作が発表されたときはショッキングだったんだろうなぁ想像に難く無い。もちろんこの映像化も原作に恥じぬ内容として受け入れられたろう。

ジョーカーを追いつめたバットマンが、お互いの歩み寄りを提案する。この時ほど明確にこの二人が表裏一体である事を示した場面はあるまい。
そしてジョーカーのジョークに笑うバットマン。雨音のみを残して余韻のある終わり。うぉ〜痺れるぅ!
色んな解釈を委ねる思わせぶりな終わり方がタマラン。

個人的には、自分本位だったバットマンが初めて犯罪者を“同じ人間”として見る事が出来た瞬間だったかも、と思っている。ジョーカーが自分と同レベルの闇を抱えているからこそ判り合えるモノがあったんだろう。

ラストは半身不随になったバーバラがバックアップ要因の“オラクル”として再起するシーンで終わる。
前半のマフィアのくだりがちょっと長いし、ジョーカーのエピソードと乖離しているのが惜しいが、それでもバットマンシリーズの本質にズバリ切り込んだ傑作だと思う。
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