カタパルトスープレックス

バットマン:キリングジョークのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.6
非常に評価の高いアラン・ムーア原作コミック『バットマン: キリングジョーク』のアニメ化作品です。ホアキン・フェニックス主演の映画『ジョーカー』のインスピレーションもとの一つにもなっています。

内容を話すと全てネタバレになってしまうので、テーマについて。この話はジョーカー誕生の話ではありません。誰しも「ジョーカー」になり得ると言う話です。それはバットマンも例外ではありません。むしろ、バットマンとジョーカーはコインの裏表です。バットマンもジョーカーも普通の人でした。そして、バットマンもジョーカーも「最悪の1日」から生まれました。バットガールもこの作品で描かれる「最悪の1日」で、後にオラクルになります。

ここの登場人物たちは普通の人たちなのですが、現実にはいません。バットマンも、ジョーカーもバットガールもジェームズ・ゴードンのような人も実際にはいません。もちろん、ゴッサムシティだって実在しません。つまり、この作品は現実を投影していません。現実を投影していないからこそ、いつの時代にも、どんな人にも当てはまる一般性があります。これが現代のアメリカの状況を色濃く反映したホアキン・フェニックスの『ジョーカー』との大きな違いです。

終わり方はかなり愕然としますし、今でも議論になっています。人によってかなり受け取り方が違う奥深い終わり方です。

コミック版『バットマン: キリングジョーク』は何回読みな直しても味わいがある傑作です。では、アニメ作品としてはどうか?気軽に傑作を楽しむための作品としては終わり方も含めて及第点だと思います。しかし、原作の作画レベルに近づいているとは言えません。前半のバットガールの冒険譚はもう少し短くても良かったかもしれません。