タイトルがネタバレしているスポコン映画。安心、間違いなしの展開で、まずまず良かった。ただ、主役の広瀬すずをもっとガッツリメインに据えた方が個人的には好みだったかもしれない。
物語の背骨となっているのは、広瀬すず演じる友永ひかりのシンデレラストーリーだと思うのだけれど、女優としての華が強いせいか、お姫様になる前から貫禄十分。それに物語におけるお姫様への切り替えも唐突感が強く、ちょっとなぁ～、と。
そもそもひかりは根性に火が付くけれど、やっぱりそれは勢いだけだったみたいな感じで、しかも、遠慮がち。イマドキの若者のリアルといえばリアルなのかもしれないけれど、スポコン感がイマイチ不足気味なキャラクター。
ひかりはムードメーカー的立ち位置からチームのセンターに転じるのだけれど、個人的に好みな筋書きは、センターかつリーダーの能力があることは誰もが知り、本人も自覚しているけれど、何かのトラウマがあってその能力が発揮できずにいるひかりが、トラウマを乗り越え、全米制覇の原動力となるみたいな感じ。
そうなると玉置彩乃（中条あやみ）は、良き参謀役かなあ。本作の場合、彩乃を主役に据えてもそれほど違和感がなく、物語の深みという点ではむしろそちらの方が良かったかもしれない。
早乙女薫子先生（天海祐希）もキャラクターが濃すぎる割には…。彼女の苦労の振り返りシーンっている？ひかりにスイッチ入れる役どころだったからかもしれないけれど、そもそもひかりと先生の関係だって、そんなに対立している風でもなかったから、スイッチを入れる役自体にやや無理を感じてしまった。
先生には、具体的な指導法の描写をもっと入れるとかして、素人集団をいかにして全米一に押し上げたかの、片鱗をわかるようにして欲しかった。
紀藤唯役の山崎紘菜の「ぎこちない笑顔」というのが、TOHOシネマズの幕間で普段見ているまんまのような気がして、プチツボ。これはうまいこと考えたな、と。
全米大会での決勝戦のダンスはとても良かったのだけれど、もっとしっかり観たかったかな…って、気が付くと注文ばかり書いている気がするけれど、ベタなこういう物語って基本的には好き。
学生時代に心を一つに、目標に向かって、努力する。そこでの苦労、そこで芽生えた友情は一生の宝物。オジサンとしてはこれまでに何度も観たり、読んだりしてきた物語ではあるけれど、良いものは何度でも良い。
そしてこのことは物語ではなく、誰もが主人公となって経験できること。劇場には多くの中高生がいたけれど、彼らがこの映画のように宝物を得られれば良いな、と。
