しの

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーのしののレビュー・感想・評価

3.8
スピンオフらしいコンパクト感と、節々に宇宙のセンスオブワンダーを感じさせる広がりが両立しており、ディズニーSWで一番雑念なく楽しめた。既に知っているゴールに到達するまでを確認するだけの話にせず、その過程でしっかり「冒険活劇」という原点に立ち返って楽しませてくれる。

まず、銃を構える姿がモロにハリソンフォードのハンソロで驚いた。エピソードも、なぜ彼があの性格になったのかを匂わせるものになっていて、全体的に非常に気を使っている感じがする。そこまでするなら、ラストはもう少し「その後」を匂わせるテンションにして欲しかったというのはあるけど…。

また、登場惑星や舞台の魅力は、地味ながらディズニーSWでも随一だと思う。バラエティに富んでいて、ディテールまで考えられており、適切に物語に絡んでくる。その後の物語が知られている分緊張感がなくなりそうな所も、シチュエーションの変化や展開のツイストで飽きさせないようにしている。

基本はコソ泥の話なので、話のスケールは大きくないものの、そのぶん大義名分に振り回されない奔放さ・軽さがあり、また終始何かしらの見せ場があるので飽きずに観れるという特徴がある。とはいえ、シリーズで猛威を振るう「帝国」の恐ろしさや、ハンが後に大きな物語に身を投じる気配もしっかり匂わせてくれる。

ハンの生い立ち、性格の形成、チューイ・ランド・ファルコン号との出会い、ケッセルラン、そして後の歴史への繋がり……と、ファンが観たいものを過不足なく見せてくれる。もちろん、ネタがわからなくても全く問題無いが、その場合はやや作品が印象に残りにくいかもしれない。

というのも、この「冒険活劇」というのがくせ者なのだ。単体では抜けの良い冒険活劇でありながら、同時に大きな物語を匂わせるという手腕は巧みなのだが、やはり「匂わせる」に留まってしまうが故の地味さはスピンオフの宿命という他ない。では本作ならではの良さはというと、やはりハンの始まりの物語であるという点だが、これも「冒険活劇」の軽さに飲まれてしまってはいる。

それでも、例えば本作で初めてSWに触れる人に、EP4的なスッキリした面白さ(の一端)を感じさせられるという意味では意義深い作品だと思う。実際、私もディズニーSWの中では素直に楽しめたほうだ。もちろん、それ以上の何かを期待していたのは否めないが。

「アウトロー」の物語(※リンク先ネタバレ有)
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