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アルジェの戦いのTSのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
3.8
【消えない意志】80点
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監督:ジッロ・ポンテコルヴォ
製作国:アルジェリア/イタリア
ジャンル:戦争
収録時間:121分
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発掘良品第43弾。
アルジェリアがフランスから独立する過程を、ドキュメンタリー並の迫力で描いた力作です。アルジェとは言わずもがなアルジェリアの首都であり、1954年から1962年までの8年間に渡るアルジェリア戦争が元ネタであります。ジッロ・ポンテコルヴォ監督は、当時の映像を一切使用せずに、文献資料を元に完全再現を試みた模様。本物としか言いようがない役者たちの演技、特に終盤の国民たちのデモは中々の迫力です。

アフリカは歴史的に、主にイギリスとフランスに侵略されていきました。その内アルジェリアは1830年にフランスに支配されます。早くからイスラーム化が進んでいたアルジェリアではムスリムも大勢いて、都市もイスラーム都市化していました。そこに欧州のフランスが介入してくるわけですから、当初から対立が絶えなかったと言えるでしょう。そのような歴史が続く中、第二次世界大戦後には第三世界の国々が次々と独立を果たし、アルジェリアもその一員となります。独立には犠牲がいる。その苦しい現実に立ち向かった人々。そのリーダー的な存在であったのがFLNのアリ・ラ・ポワンです。どうやらこの人名自体はフィクションのようですが、この男のように血の気の荒い人はいたことでしょう。彼の最後まで諦めない闘志、そして引き継がれる意志。これらの「消えない意志」は近代以降の独立運動を語る上では欠かせない要素です。今作はその「消えない意志」を力強く描いており、それが秀作たる所以なのでしょう。

爆破テロを起こしまくるため、人によってはFLNが悪と思えてしまいます。そして、それを悪とみなし、正義のために一掃しようとするフランス軍。しかし、この国を支配しているのはフランスであるため、国民は巨視的に物事を見なければいけません。確かに強国のフランスから保護されている方が安全なのかもしれません。しかし、アルジェリアの人にとっては、自分たちのアイデンティティを蔑ろにされていることが何よりも許せないのです。それは他の植民地の人もそうだったでしょう。それらのアイデンティティを尊重した結果、歴史上稀に見る多くの「独立国」が形成されていきました。

何を持って国とするかは様々ですが、国連加盟国だけで世界の国は190を超えます。これは、長い歴史を見ても最多と言えます。しかし、細かくなりすぎた故に発生している紛争もあります。独立することは重要なこと。しかし、独立しすぎることにより新たに発生する事案もあります。そのあたりに関しても考えさせられる一本でありました。

演出が加わっているとは言え、資料的価値は大変高いと思えます。ドキュメンタリーを見るつもりでご覧ください。
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