ドーチャ

忍びの国のドーチャのネタバレレビュー・内容・結末

忍びの国(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

忍びの国はその余韻が桁外れです。何度でも観たくなる特別な映画です。私の人生マスト映画になりました。
忍びの国はコメディの衣をまとった、圧倒的な反戦映画であり、現代への辛辣な批判を含む歴史映画と感じました。ちょっとチャプリンの映画に通じるものがあります。一本の映画の中に、笑いあり涙あり、ラブあり、アクションあり、駆け引きあり。とコンテンツをこれでもかと詰め込んであります。よくぞここまで詰め込めたものです。本当あっぱれです。
多分そのため、一回観ただけでは、理解しきれないと思います。
映画の始まりは忍びたちの、他家との小競り合いから無意味な殺し合いがあります。笑いながらの殺し合いですから、この映画に拒否反応を示す人もいると思います。
ただ、忍びたちの育った環境や時代背景が映画の中に伏線として、散りばめられています。そこの理解が進むと忍びたちに哀感と同情を感じ、最後にはかわいらしさや愛着までが生じ、小競り合いに全く別の視点を見出します。そして、その伏線の回収に嵌ると自然とこの映画に嵌りきっています。
キャストが良い。どの役も嵌り役の役者揃いです。それは主なキャスト以外の役者さんにもいえ、素晴らしいです。どの場面も説明的なセリフはほとんどありません。それでも、視線、佇まい、声音からその人物の思いや背景が浮かび上がって来ます。そして、小気味良いやりとりが各所に散りばめられています。
私は主役の無門に一番惹きつけられました。特に最後の方の平兵衛との殺陣。目の表情が豊かで、どんどん闘いの中で変化していきます。時代劇は好きでよく見てきましたが、手に汗を握り、涙流しながら、息を殺すように魅入られた殺陣は、この映画が初めてです。
また、声にもやられました。粋な優しい木挽き唄。下忍への呼びかけ。なんと言っても、妻お国に吹き矢が刺さったときの慟哭。あの声を聴きたくて、何度も劇場に通うことになりました。
もう一つ、声で秀逸なのはナレーション。軽くなりそうな映画に深みを与え、ラストシーンでは去りゆく二人に幸を祈り、希望を含ませる温かみのある映画に仕上がっていました。
忍びの国は、自分の気分で涙活するも良し。笑い転げても良し。アクションを愉しむこともでき。堅苦しいことなしに歴史に浸ることもできる。本当に老若男女問わず楽しめる凄い映画です。
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