南森まち

ガザの美容室の南森まちのレビュー・感想・評価

ガザの美容室(2015年製作の映画)
3.3
パレスチナ・ガザの美容室の、店員2名と客たちによる群像劇。価値観をぶつけ合う中、外で激しい戦闘が始まり…というお話

大規模停電や銃撃戦が起こるので、丁寧に髪の手入れをやっている場合か、と思ってしまう。しかし、常に戦火にさらされているガザでは、これも日常の一部なんだな…。
猛獣たる男達のもたらす戦闘行為のため、常に危機に晒される彼女たちの生活を巧みに描く。

離婚調停中の主婦、ヒジャブを被った信心深い女性、結婚を控えた若い娘、出産間近の妊婦
、わがままな老婆、ロシアからの移民、下品でおしゃべりなオバちゃん、携帯を常にいじる娘…「ああ、こんな人いるいる!」というのを感じさせてくれる。
そんな中、会話で垣間見える彼らのおかれた貧困・性差・婚姻といった問題や、突如として始まる戦闘に身の毛がよだつ。

テレビで報じられるニュースでは異世界のような遠い国に感じるが、そこにいるのは紛れもなく、わたしたちと同じような無辜の市民だと気づかされる。

イスラエル視点ではなく、パレスチナ視点の映画が公開できていることに大いに意義がある。ただそれだけではなく映画としても良く出来ていた。
ただ、結局のところ、ハマスは悪者扱いではあるんだけどね…。そこはまだまだ難しい。