泳ぐマシュマロ

ガザの美容室の泳ぐマシュマロのレビュー・感想・評価

ガザの美容室(2015年製作の映画)
3.7
パレスチナ、ガザの美容室。
各々の事情が見える閉じられた空間で、戦争状態を追体験する恐怖。

少女。怒りっぽい女、ロシア文学を愛する新婦、その母、姑。
恋人ともめている女、おしゃべりな女、敬虔な女、妊娠している女、女女女。
美容室の外には、ライオン。ライフル。恋人。男たち。銃弾。爆発。戦争。

「女は有能だからいい政府を作れる。ハマスがもたらすのは貧困と破壊だけ。イスラエルはおまけ」とおしゃべりな女が暗い部屋で言う。
あー、いいなぁ。
彼女たちの世界は、イスラエルなんかにどうこうされないんだ。

銃弾と爆弾に揺れる停電の美容室で、涙で口紅を塗る強さがたくましくて、でも一方で結局、男の戦争に振り回されて、疲れ果てて、平気な顔して泣いている。国に閉じ込められ、貧しく、治安は悪い。

本当に、「オシャレする。メイクをする。たわいないおしゃべりを、たわいない毎日を送る。それが、私たちの抵抗。」なんだろうか?
このコピーだけ見ると、「パワフルなイスラム女性たち」みたいなものを思わせられる気がするけど、実際みんな平気な顔してプツンとはちきれそうな緊張感、閉塞感、疲弊感がある。

本当にオシャレしてメイクすることが女の抵抗なのか。確かにそうであり、でも抵抗といっても、実に消極的で受動的な抵抗にしかなりえない。結局戦争に巻き込まれ、悲しい思いをしている女たち。重い。

ちなみに、ずいぶん手際が悪い美容室である。
一人の脱毛にどれだけ時間かかるんだろう。。