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メリー・ポピンズ リターンズのmaverickのレビュー・感想・評価

3.9
『メリー・ポピンズ』の続編。

前作の25年後を描いており、子供だったマイケルとジェーンの二人もすっかり大人になっている。魔法が使えるメリー・ポピンズだけが歳を取っておらず、ジュリー・アンドリュースに変わって本作ではエミリー・ブラントがメリーを演じる。前作に登場した主要キャラが年月を経た形で登場し、世界観を綺麗に引き継いでいる。

エミリー・ブラントの本作での演じ様は見事だった。限りなく前作のメリーを再現し、歌と踊りのパフォーマンスも圧巻である。ただ、これは無茶を承知で言わせてもらう。ジュリー・アンドリュースのメリー・ポピンズとはやっぱり違うなと。こんなことは当たり前ではあるのだが、ただやっぱりそれが気になってしまう。ジュリー・アンドリュースの演じたメリー・ポピンズは唯一無二。それをはっきりと感じてしまった。これが舞台版とかなら全然問題ないんだけどね。映画版の前作と完全に同一人物という設定こそ無茶があったのかもしれない。感じた違いといえば、ジュリー・アンドリュース版が温かみがあったのに対し、エミリー・ブラント版はちょっときつめな印象。原作のイメージにはこちらの方が合っているのかもしれないけどね。

『メリー・ポピンズ』はアカデミー賞において、最多13部門にノミネートされ5部門を受賞した傑作。それと比べると、本作は無難な続編という印象。主演女優賞を受賞したジュリー・アンドリュースの存在も大きいが、後の世にも受け継がれる名曲の数々、実写とアニメーションの融合による表現方法などを見ても、いかに前作が優れていたかがよく分かる。丁寧にオリジナルを踏襲した努力は伝わるだけに、せめて脚本がもっと良ければなと残念ではある。演出やインパクトで前作を超えれず、話の内容も前作と似たような感じに収まってしまっては、どうしても見劣りしてしまうだろう。映像表現の技術力においては格段の進歩を感じたけどね。もはや実写レベルのCGの凄さによる魔法の表現には感動があった。マイケルを演じるベン・ウィショーの深みのある演技力も本作の光っていた部分ではあった。

子供の頃には無邪気だったマイケルが、かつての父親のように独りよがりな現実主義者な大人になってしまっている。社会で生きていく内に、みんな子供の頃の純粋な気持ちを忘れてしまう。『くまのプーさん』の続編である、『プーと大人になった僕』のクリストファー・ロビンと同様、そんな気持ちを忘れては駄目だよという作品性だ。そういう部分は良かった。忘れてしまった大切な気持ちを思い出すマイケルの心の変化に感動がある。ラストが特に素晴らしかった。


全体的には残念な感じもするが、とにかくあの『メリー・ポピンズ』の続編が観れるということだけでも嬉しさはある。無難な続編だとしても、前作のファンであれば観て良かったと思える作りにはなっている。前作を知っていれば嬉しい要素の数々も。特に前作でバートを演じたディック・ヴァン・ダイクのカメオ出演には歓喜。ここのシーンは泣ける。本作で一番の感動シーンだ。メイキングを見ると監督を始め、全員が前作にリスペクトを持って本作を作っているのが感じられる。そういう愛はしっかりと感じた。原作は全部で8冊あり、さらなる映画の続編も視野に入れているとか。例え無難な出来だとしても、続きは観たい。もし作るならキャストは本作と同じがいいかな。エミリー・ブラント版はこれはこれで好きなので。自分がエミリー・ブラント自身のファンでもあるし。変にキャストは変えず、このまま続編お願いします。
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