和桜

ベロニカとの記憶の和桜のレビュー・感想・評価

ベロニカとの記憶(2017年製作の映画)
3.9
かつての恋人や親友と話すことで、自分が抱いていた過去の思い出が揺らいでいく。
自分にとって都合の悪い過去の記憶は、月日と無意識のうちに忘れてしまうことがある。だけどその都合の悪さは、他の誰かにとっては一生忘れられない記憶として残りその人を縛り続けているのかもしれない。
これは多分誰にでも起こりえることで、その恐さと戒めのような映画だった。

教訓めいた話でありながら、主人公への共感や感動という側面は薄い。こうしたテーマでは、主人公がどれだけ自分の過去と向き合ったかが大事だと思うのだけど、この老人の場合はそんな葛藤とはほど遠い。だからこそ終盤の展開はあまりにも都合が良く、だけどそれが避け続けてきた主人公自身の薄さを現しているのかもしれないと邪推してしまった。

自分がどれだけ忘れようとした事柄も、誰かが必ずそれを見ている。都合良く塗り替えた過去と直面した時、人は本当の姿に自分に気づけるんだけど、それは他人から見ればいつもとなにも変わらない姿。結局自分のことを一番理解しているのは他人なのかもしれない。周りの人間の「あなたはそういう人よ」という言葉が深く突き刺さる。
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