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手紙は憶えているのHKのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.0
お年寄りのほのぼのロードムービーかと思ったら大違いで、かなり物騒な話ですが、よくできた短編ミステリー小説のような味わい。
原題は“Remember”(思い出す、思い出せ)

認知症の進む主人公ゼヴは同じ介護施設の友人マックスの計画に従い施設を脱走。
記憶を失くしかけながらもマックスの手紙の通りに計画を実行しようとしますが・・・
戦後70年あまりが経過した後に実行される老人たちのナチスへの復讐劇です。

最近は珍しくなくなった記憶喪失系の作品のひとつ。
ちょっと話が出来すぎのきらいもありますが、サスペンスは一級品。
丁寧な作りと老優たちの名演は目が離せず、食い入るように観てしまいました。

カナダ・ドイツの合作で監督はカナダのアトム・エゴヤン(『スウィートヒアアフター』)。
主人公ゼブを同じくカナダ出身のクリストファー・プラマー(当時86歳)。
ドイツから『U・ボート』のユルゲン・プロホノフ(当時74歳)、
スイスからは『ベルリン/天使の詩』のブルーノ・ガンツ(当時74歳)
アメリカから『エド・ウッド』などのマーティン・ランドー(当時87歳)らが集結。
7年経った現在、ご存命なのはプロホノフのみです。
お年寄り以外では途中からキャラが豹変するディ-ン・ノリスがコワクて印象的でした。

しかしプラマーはこの後にも『ゲティ家の身代金』や『ナイブズ・アウト』など認知症とは程遠い健在ぶりを見せてくれますから、本作での危なっかしいヨボヨボ姿は完全な演技ということ。いや、さすがです。
そして相棒役のマーティン・ランドーも本作が遺作ながらもしっかりとした存在感。
お二人ともこのお歳にして、出演した作品を代表作の一本にしてしまう役者魂に拍手。
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