ケニチロー

手紙は憶えているのケニチローのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.5
メインとなる“お爺ちゃんは健忘症”というストーリーラインに気を取られているので、まさか終盤にそんな怒涛のオチが待っているはこれっぽっちも考えず、まんまと騙された。こんな復讐劇を成し遂げる人間には正に「鉄の意志」が備わっている訳で、なんというか韓国映画でたまにお目にかかる“恨”の概念を思い出してしまった。
中盤ぐらいまで割りと「お爺ちゃんもうご飯は食べたでしょ」的な、ほのぼのムードで進行するが、そこに突然「ジュー・マザファッカ」と口に出すことに対してなんの疑問も持たない人間(「ブレイキング・バッド」のハンク!)を投入することにより空気がガラリとと変わる。このシーンの緊迫感といったら近年お目にかかった記憶があまりないそれ(あのサイレン&発破音)で、「トゥルー・ロマンス」におけるホッパーvs.ウォーケンの例のシーンなどを思い出した。
「デビルズ・ノット」では題材の割りにボロボロの出来だったので「大丈夫かいな」と不安になったアトムのエゴやんであるが、本来の冷徹な底意地の悪さを取り戻してくれて本当に良かったなと思っている。自分の資質を遺憾なく発揮できる良い企画に出会えたのではないだろうか。
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