おっちゃん

手紙は憶えているのおっちゃんのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.0
世界各地でテロなどは変わらずあるが、多くの人は平和に過ごし全般的に長命になっている。長命を支える医療技術の進展は、軍事分野の進展と切り離せないということをよく聞くが、その進歩に人間の精神が追いついているのだろうか。
戦後も70年を超え、世界大戦証言者も極少数となってきた。ホロコースト証言者もである。この映画はいうならば、戦争の犯す罪深さと、科学技術と人間の精神性の乖離を問うた作品。
自分も含めて、物事に対する記憶への信頼感はかなり強力であるし、揺らいでしまったときは生きていく自己への価値は失うと思う。しかしながら、記憶の倒錯ということは案外よくおこることであるし、ましてやそれが自身にとって不都合なものである場合は尚のことである。記憶こそが自分の史跡であるにもかかわらず、それが揺らいでしまうと何に頼れば良いのか。ある人は、家族であったり、宗教であったりとするのであろうが、彼は「手紙」なのである。これがラストに何をもたらすのかはネタバレになるので書けないが、いろんな意味で人は脆いものだと改めて考えさせられた。この時期に作られたのも、大変意味深い。