wiggling

wigglingの感想・レビュー

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
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痴呆老人版『メメント』でしたか。プロットも演出もかなり意識してるよねこれ。そして抜群に面白い。『メメント』のようなトリッキーな時制操作がないぶん、物語の背後にある重苦しさが際立つ。

鑑賞者の欺き方も見事と言う他ないんだけど、中盤でゼヴの射撃精度の高さを見せることで、勘の良い観客を絶望の底に突き落とすんですね。まるで頰にナイフを当てられ「いいな、黙ってろよ」と脅されている気分。冷や汗が止まらない。
ほのぼの感漂うおじいちゃんロードムービーが、それを境に地獄行脚と化してしまった。

そして真実を知りながら交流を続けてきたマックスの心情はどんなものだったのかと。異常すぎるほどの段取りの良さに違和感を覚えつつ、その執念の源泉の荒涼を想う。想像を絶するとはまさにこのこと。

人間にとっての記憶のかけがえのなさ、でもそれはフラフラと移ろう頼りないものであり、そもそも千差万別の思考を経て保存されるという真偽すらあやふやな、そんな記憶というものの蠱惑性にまたしてもやられてしまいました。