ふたば三十郎

手紙は憶えているのふたば三十郎のレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.5
ノーランの『メメント』では、殺された妻の復讐をするガイ・ピアースが、記憶障害のため手掛かりを全身に刺青してる姿のインパクトが大きかったが、本作では痴呆老人が腕にメモして手紙を何度も読み返す姿がそれを超えたどころか、ちょっと笑ってしまう副作用まで生み出した。

正直、マジなボケ老人は「お笑い」としては反則だと思うが、そもそも笑いを取りに行ってる作品ではなく、アウシュビッツの生き残りと隠れナチの話なのでテーマは重く、「お笑い」とは不謹慎だが、劇場では同じように堪えながら笑っていた同類が何人かいたことは記しておきたい。

主演のクリストファー・プラマーだけでなく、マーティン・ランドーの老いっぷりや、ブルーノ・ガンツのまさかのちょい役具合や、違和感ありまくりのユルゲン・プロホノフなど、結構な豪華キャストは楽しめた。

だが、展開が読めるというか、コスタ・ガブラス監督の傑作『ミュージックボックス』を想起させられてしまい、どうしてもそれと比較せざるをえなかったのが残念なところ。
個人的には本作は高得点なんだが『ミュージックボックス』と比べては人生に残る一本にはならない。監督の差かな。

あと、ユダヤ人の執念は凄い。
「いつになったら奴等、執念深いナチの残党狩りをやめる気かな。たぶん百年たってもやめねえだろうな」
☆☆☆★★