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手紙は憶えているのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.6
「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」と同じ認知症の老人がガッツをみせる作品。

同じ老人ホームの友人マックスから家族を殺したドイツ人将校オットー・ウォルシュへの復讐を依頼される90歳、認知症のゼヴ。彼は友人と自分の家族のため復讐の旅に出るというクライムサスペンス。

監督がアトム・エゴヤン。毎度結末をぼやかし嫌な余韻を残す(褒めてます)彼が今作はきっちりすっきり決着をつけている…!でもやはり監督、心底冷え冷えする結末でした。

実際とてもハラハラします。ゼヴはひと眠りするともう覚えてない。「手紙を読め」と書いてある腕の文字をみてから、ようやく今までのことを思い出す。
交通移動もつらそうだし、タクシーで現地へ連れてってもらうか、誰かに案内してもらうかしないと道順が覚えられない。
着替えを買いにショッピングセンターへ行けば物の多さに当惑。
復讐のためにグロッグを購入するが、構える手は非常に頼りなく。

ゼウ役の86歳のクリストファー・プラマーの表情がいちいちいいのです。
渋かったり、戸惑ったり、頼りなげでいて、ひたむきで格好良い。
他の俳優陣も素晴らしく、ナチに傾倒している息子役にディーン・ノリスはハマり役。

普通なら忘れることが悪いことだとは思わない。
だけど歴史が産んだ悲劇はそれを忘れることを許さなかった。
そんな考えさせる映画でした。