踊る猫

手紙は憶えているの踊る猫のレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.5
なかなか評価が難しい。低予算の中で撮られた燻し銀の渋さが魅力的な映画であることは認めたい。脚本の勝利だろう。だが、やはりテーマの重みと映画の面白さがマッチしていないというか、ナチを弾劾する内容にしたいならもっと細工が必要だったのではないか、という気もする。回想シーンを入れるとか小道具をもっと工夫するとか……コミカルな要素も禁欲されているので、もう少し「ポップ」さというかデーハーさがあっても良かったのではないかと惜しまれる(アイドル的な魅力を備えた若いヒロインを入れるとか)。社会派的なアプローチというのでもなく、エンターテイメント性に舵を切っているわけでもなく、ただ最後の最後のひと言を言わせたいがために手法に淫した映画、という以上のものを感じられなかった。爺さんの妄執を描かせるための説明があっても良かったのではないか、と。傑作になり損ねた残念な映画。
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