Netflixで鑑賞。
戦争の爪痕、ホロコーストの痛みを抱えながら全てを時の中へ置いて来てしまった老人の哀しい回顧録的ロードムービーです。
認知症を患う老人ゼヴ(クリストファー・プラマー)。
施設内で知り合った友人マックスとのある計画を実行する為、
彼から封筒を預かります。
その中には、計画が事細かに書き記された手紙と、数枚のお札が入っていました。
ゼヴは仮病を使い歓談の場を退席し施設を抜け出し、ついに実行を開始します。
戦時中ホロコーストで受けた悲劇の雪辱を果たす為、
ゼヴはある一人の男を探す旅に出るのでした…。
あまり詳しく書けないネタバレ厳禁系映画なので、詳細は割愛しますが、
見終わった後の虚無感が心に残り、
驚きの隠せない作品だと思いました。
戦争が心に残した爪痕の大きさ、痛みは、
程度の差こそあれ、
誰にでも平等にのし掛かって来て、
拭っても拭い去る事が出来ない程、深く刻み込まれてしまっているのだと思い知らされます。
認知症のゼブの危うさと、
記憶を繋ぎ留めて置く役割を担う手紙。
記憶の不確かさと記録の確かさ。
脳は都合の良い情報だけを抜き取り、
記憶をすり替えて行く。
ゼヴの辿る道の先にはどんな結末が待っているのか、
是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。
旅の途中でゼヴが弾くピアノの音色が、
カラカラに乾いた様な空気感を潤わせてくれて、
オアシスの様に心に染み込んで行ったのが印象的でした。