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手紙は憶えているのumisodachiのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.4
見逃していた映画シリーズ!

アメリカの養護施設で暮らす90歳のゼブは認知症を患っており、1週間前に妻が亡くなったこともすぐに忘れてしまう。彼はアウシュビッツの生き残りだったが、施設で同じく生き残りのマックスと知り合った。マックスは、当時の収容所の職員が身分を隠してアメリカに渡ったことをゼブに伝え、その男を探し出して殺すように細かい指示をしたためた手紙を託す。男は「ルディ・コランダー」という名前で暮らしているのだという。ゼブは、5人の「ルディ・コランダー」に会いに行く……。

手紙を渡されたくらいで大オチは絶対こうだな、と確信したくらい先が読めてしまったのだが(その通りだった)、それを差し引いても良い作品だった。認知症という要素を上手く利用した脚本で、単なるおじいちゃんの一人旅が非常にスリリングな質感になっていく。

ゼブは4人のルディ・コランダーに会いに行くのだが、全員がドイツから渡った人間で隠された人生を背負っている。彼らとの会話を通して、戦時中のあらゆるドラマが控えめに語られていく。回想シーンはないが、90歳のおじいさんがギリギリの状態でなんとか復讐を成し遂げようとする姿に、少しずつ歴史の闇が重なっていくのがツラい。

ゼブを演じるクリストファー・プラマーのリアルすぎる認知症の演技にも震えるのだが、途中で出てくるディーン・ノリスの存在感が凄い。ルディ・コランダーの1人の息子を演じているのだが、極端なユダヤ人差別主義者という設定。「こういう人いそうー!」というリアリティがあって目が離せなかった。

ヘビーな描写は少ないけれど、心にズシンとくるおじいちゃんロードムービー。おすすめ。







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