おおお、この皮肉だがファンタジックなペトロフ節は「春のめざめ」に通じるものを感じる。同じ短編集内では圧倒的に華やか。
マーメイドに象徴される、男目線の女性の美、神秘性、快楽、情の深さと、それ故の恐怖。それを台詞なしの短編で一遍の寓話に仕立てている。
それに溺れて過ちを犯した父親、同じ過ちを繰り返そうとする息子、深い信心の中にすら生まれる聖母マリアという存在の不可解さへの心理的抵抗。
あくまでも男目線で失礼な話なんだが、まあ相変わらずターナーの風景画で印象派的なキャラクターたちがするする蠢くような美しい描かれ方ですわ。
父親を見た瞬間に、間を置いて顔を歪めるマーメイドの表情と演出に痺れる。一瞬なのにインパクト大。
あとマーメイド初登場時、冬のソ連の流氷に紛れてて、マーメイドとはいえ寒くないんか!?違う意味で鳥肌が立った。(いわゆる寒イボですね)