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哭声 コクソンのohassyのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
3.5
韓国映画というのは、邦画に比べて総じてグロテスク。

半年ほど前「アシュラ」「お嬢さん」と同時期に上映されていた韓国映画。
3作品全て評価が高く、全部鑑賞するつもりでいたけれど、これだけ劇場で観なれなかったのでDVD視聴。

グロテスク、というのは血や内臓といったいわゆるスプラッタ表現のことだけではなくて、感情表現や演技、ストーリーなど全体的に邦画に比べて正直というか生々しい、という意味です。
登場人物は僕の想像を超えて言いたいことを言うし、やりたいようにやる。
それは日本人との性質の違いなんかもあるんだろう、よくは知らないけれど。
どっちがいいという話ではなくて、韓国映画を観ているとそういうのが脚本や演出に表出するから驚くことが多いということで、だから想像を超えてきて見応えがある作品が多い。
もちろん映画技術の高さもある、全体的にすごく洗練されている。

ナホンジン監督はチェイサーで知った。
それはそれは嫌な映画で、最後は思わず勘弁してくれとつぶやきながら、それでも目が離せない、力のある作品だった。
構成がとてつもなくうまくて、観客を自在にミスリードしながら振り回し、感情をコントロールして、気持ちを擦り減らす。
天才なのか緻密な計算なのか、多分後者かな。
ギャグ漫画家が普段は冷静でおとなしい人が多いのと同じで、きっと作風からは遠い印象の人なのだろう。
観客の感情の起伏を、緻密に粘り強く計算して組み立てているに違いない。

本作はそれに加えて、何を信じればいいのか?という部分にまで振り回されることになる。
しかも、ミステリーとして全てを完璧に整えることをしないという、熟練の余裕が加わっていて、読み解こうとしてもきっとうまくいかない。
シナリオが甘いわけじゃなくて、多分わざと。

そして怖い。
相変わらずイヤな気分になるビジュアル。
娘の耳障りな奇声。

救われない。

演者が「アシュラ」と結構かぶっているのだけれど、韓国映画はおじさん俳優が粒ぞろいでいいなあ。
大きな作品で、イケメンじゃなくてもきっちり主演が務まる。
そういうのとてもいい。

監督の今後の作品も、観たくないけれど観たい。
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