Yoko

哭声 コクソンのYokoのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
4.7
平凡な田舎町で起こった残虐な一家殺人事件。
呼び出された警察官はその異様な現場に圧倒される…。


そこまで数を観ているわけではないが、今まで観てきた韓国映画の中で一番面白いと言っても過言ではないかもしれない。
いや、「しれない」という推量ではなく断言できる。
とんでもない傑作。

科学は神羅万象に通用する真理だということが概ね常識であるとされる現代。
魔女狩りなんぞは科学的見地からして非合理的で野蛮な行為であるとされる時代において、今作のような類の映画を世にたたき出したこと、そしてその試みが強烈な演技と臨場感によって怖ろしさと現実感を帯びる。
もし、映画が太古から存在する技術で、中世のころなんかに今作が出来上がったのであれば、おそらく当時の観客は今作をごく自然と受け止めることだろう。
今では「オカルト」という言葉で片付けられるかもしれないが、当時の人々(例えば魔女狩りをすることで多かれ少なかれ安堵を覚えていた人。皆がそうであったはずはなかろうが)の考えの根底にあるものを軸に描かれていると思えるからだ。
普通、そんなジャンルを扱う映画(今作が扱う題材については未見の方に申し訳ないのであえて言いませんが)はフィクションとして楽しむのが当たり前だ。
現代においてそんな話は嘘っぱちの世迷言、現実に起こるとは到底考えられないからだ。

しかし、今作で描かれる現象はもしかしたら本当にあるかもしれないという錯覚を覚える、そんな悪魔の誘惑を宿す作品だ。
「そんなことあるはずないでしょ」という冷笑的な考えの奥底にある常識が揺り動かされる。
非現実感が現実味を帯びた環境下で繰り広げられるミステリー、それらの謎に迫る群像的邂逅。
前半が割と笑えるギャグが挟まれるそのギャップも相まってか、中盤以降は全く目が離せない。

韓国映画史に残すべき歴史的傑作でしょう。
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