あまね

ウェディング・テーブルのあまねのネタバレレビュー・内容・結末

ウェディング・テーブル(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

結婚式の下座も下座、変わり者と訳あり者ばかりが集められた19番テーブルに座った招待客が織り成す物語。
最低の出だしから不協和音で悶々とする中盤を経て、最高にほっこりするラストが迎えてくれた、『終わりよければ全てよし!』と思わず膝を打ちたくなる可愛い物語!

友人(新婦)の結婚式に出席した主人公だけれど、実は直前に新婦の兄に振られたせいでブライズメイドの任を解かれ、案内されたテーブルも変わり者ばかりの末席だった。
パーティが進むと他のテーブルは盛り上がっていくが、このテーブルだけはちぐはぐで、招待客同士の会話も捗らない。
主人公はすぐに席を立って、元カレと喧嘩したり、元カレの今の彼女に嫌味を言われたり。かと思えば、ナンパ男になびいたり……
そんな時、主人公が元カレの子供を身籠っていることがテーブルの招待客にバレ、騒動になりかけて――

主人公の勝気さや、別れた男に未練たらたらなのに強がってみせるところ、笑ったり怒ったり拗ねたりするところは、とても可愛いと思う。でも、どうしても共感できなくて、困った。
可愛いけれど身勝手。あまりお近づきになりたくないな、が第一印象。
でも物語が進んでいくにつれて、どんどん彼女の可愛さが増していく。
ラスト30分くらいで完全に第一印象が吹っ飛んで、真っ直ぐな気の強さを本当に可愛いと思うようになっていた。負けた(笑)!

他のゲストも、序盤~中盤は個性が強くて結婚式にそぐわないような行動を取る《珍客》といった印象。
でもこちらも物語が進むと同時に、それぞれが抱える問題や悩みが浮き彫りにされ、やがて吹っ切れたり、解決したり。肩の力が抜けて本当の意味で親しくなっていく彼らに、とてもほっこりした。

物語の内容は決して珍しいものではないけれど、心情も場面も見せ方がすごく素敵だと思う。
主人公が元カレに叫ぶ『あなただけに失望したい。あなただけに失望されたい』という台詞は、それまでの流れや元カレのベストマンとしてのスピーチ、直前に彼が主人公に吐露した心情と重なり、ずどんと心に突き刺さった。すごくいい台詞だ!
他にも、この場面でこの台詞を入れるんだ! やられた! そんな風に感じる台詞が幾つもあった。

楽しげな結婚パーティの雰囲気や弾むような音楽、その合間に映し出される冴えない面々。その切り替えや対比も楽しくて、センスが素敵な映画だと感じた。

また、ずっと冴えないはずれ者という扱いで描かれてきた19番テーブルの面々の前に、最後の最後に新郎新婦が挨拶にきて、それぞれの招待客と楽し気に会話をする場面は、とてもあたたかい気持ちになった。
この最後の最後、ぎりぎりに入れるところがすごい。ベストタイミングだなぁ。
いつの間にか観ている私も拗ねた気持ちになっていたので、当たり前のように喜んでくれる新郎新婦を見て、ああここに来て良かったなって、なんだか招待客の一人になったように感じてしまった(笑)。

正直、7割くらいは珍客の不協和音とちょっとテンパった女の子を見る感じで、盛り上がりに欠けるかもしれない。
でもそこから最後に向けての展開は、誰もが幸せであったかい気持ちになれる、素敵な世界だと思う。
あまね

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