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アリー/ スター誕生のJIZEのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.8
魂の継承。主演レディ・ガガの魅力なしで本作はここまで特別な輝きが生じなかったように感じた。彼女自身の過酷な実人生のメタ目線でも境遇や立場において重なり合った音楽映画の佳作が誕生しただろう。主人公アリーが夜な夜な開催される小さなバーの底辺から周囲を押し抜けスターダムに伸し上がっていく無類の過程が愛する者との親密な機微に寄り沿いながら極めてフツウに男女の愛が紡ぎ出される。冒頭で初めてアリーが登場するワンカット目で個室のトイレから盛大に飛び出して急にシャウトする描写が水を打ったような静寂の中で映画館全体に響き渡る。が,まさに彼女が元来持ち得る誰に頼る事もない有能な資質そのものが序盤の時点で明確に示されている。この映画は至ってフツウの音楽ラブストーリーだが逆を返せば観る者それぞれに闘う勇姿を高らかに与え讃美する人生のメッセージ性に秀でた素晴らしい作品ではないか。またブラッドリー・クーパー演じる音楽家ジャクソンの酒や薬に手を出す精神的な脆弱ぶりもアリーが人気を博すにしたがい落ちぶれる不可逆な連なりが超善人ゆえに観ていて心中が痛くなる。あれほどの観客を沸かせ手玉にとるスターに上り詰めた天才でも単なる新人歌手の飛躍で嫉妬するのかと感じてしまった。ジャクソンが抱える聴覚障害や亡き父親の存在など内面の弱さと寛容さの対比が後半の彼の運命を左右する展開にアシストを加えていた気がした。作品の苦言はアリーの底辺の描写ももうちょい長めに観たかった点や上映時間136分とだいぶ冗長に感じる箇所も散見されたがその重たさを魂の歌声に乗せ感じ取れるラストも爽快さが残った。というようメインテーマ「シャロウ」の鳥肌が立つような圧巻の熱唱然りでガガ好き以外にも渾身の音楽ラブストーリー映画を来週の本公開の時期に合わせてぜひお勧めしたい。
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